いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

10005-0005 ペンの話

 一ばん最近に購入したカメラが、ペンなんです。
 オリムパス製。。
 正しくはオリンパスなのは知つてゐるが、オリ"ム"パスと書く方が好みなのだ。真摯で生真面目なファンの皆さま方には、ご容赦願ふ。
 オリムパスのペンと云へばおそらく、多くの読者諸嬢諸子はマイクロフォーサーズ規格の、ミラーレス・デジタル一眼カメラを連想するんではないかと思はれるが、わたくしが買つたのはそれではない。
 ペンFといふ極めて独創的な、知る限りではオリムパス以外は手を染めなかつた、ハーフ・サイズでレンズ交換も出来るフヰルム一眼レフを連想する方もをられるかも知れないが、それもまた違ふ。

 ペンS。

 ペンと名付けられたカメラの二番目の機種であり、わたくしはこれが、完成形だと思つてゐる。
 わたくしの手元にあるのは、シリアル番号が334562の個体で、Dズイコー3㎝F2.8を搭載し、目測ながら70㎝まで近寄る事が出来、バルブと1/8~1/250秒のシャッターを備へ、6枚の絞り羽根…ものの本では絞り羽根が5枚と記されてゐるが…を有する。
 このDズイコーが素晴しくよく写る。
 Dズイコーに採用された3群4枚のレンズ構成は俗にテッサー・タイプとも呼ばれる、ごく簡単な構造であつて、偉大なパウル・ルドルフの…いや、昔日の光学大国独逸の栄光を…いや、レンズ史の話はこの際どちらでもよろしい。

 目測で露出計も持たぬカメラで、素晴しくよく写るも何も無いだらう、と思ふのは間ちがひだ。
 ペンSが現行機種だつた当時に比べ、フヰルムの性能が飛躍的に向上してゐるのが、理由のひとつ。
 ハーフ・サイズといふフォーマットもまた、この場合レンズに対して、被写界震度の点で有利に働いてゐるのが、理由のひとつ。
 最も大きな理由は、ペンSで撮るのが、実に痛快である事だらう。
 ざつくりと露光を合はせ、同じくざつくり焦点位置を決める。なーに、ISO100のフヰルムを好天の野外で使ふなら、F5.6かF8の1/250秒か1/125秒の組合せで大体問題は無いし、これくらゐの露光条件なら3m辺りに焦点を決めておけば、大体外す事も無い。後は気分でちまちま弄りながら、シャッタ釦を押せばよい。

 この"大体"が痛快なんである。

 どうやつても厳密に露光や焦点を決められないのは、逆さに考へると、それらから切り離されてゐる事を殆ど明示してゐる。その点に気が付くと、写真を撮る行為そのもの…必須の前段階と思つてゐた、露光と焦点の調整を飛ばして…に集中出来る。わたくしの思ふ"大体の痛快"を多少詳しく云ふと、こんな感じになるだらうか。
 シヴィアに単体の露光計を用意し、リバーサル・フヰルムを用ゐる方がよく、距離もきちんと測る方が、Dズイコーと云ふ優れたレンズの性能を存分に発揮させられるだらう事は勿論である。勿論ではあるが、それは、愉しい行為かね。間ちがひの無い写真を確実に撮りたければ、その辺の量販店の棚に並ぶデジタル・カメラ(デジタル・カメラに記録された画像を写真と呼んでいいのか、疑問はあるのだが、ここでは踏込んで考へない)を買ふ方が余程に確実だし、いやたとへば携帯電話に内蔵されたカメラだつて、近年のは恐ろしい性能なんだから。
 ペンSを使つて撮つた写真が必ずしも、よく撮れた写真になるとは限らない。が、高揚した気分でばしばしシャッタを切つた後、さて全体、どんな写真になつてゐるんだらう、とわくわく(乃至びくびく)出来るのは、ペンSユーザに与へられた特権ではないかと、わたくしは静かに主張したい。

 シリアル番号334562は、わたくしにとつて三度目のペンSである。
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by vaxpops | 2010-12-23 12:00 | 画像一葉 | Trackback | Comments(0)
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