いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

13050-0198 調味料について

 勿体振つた題名だけれど、中身はいつもと変らないので、ご安心頂きたい。

 私が蕎麦やラーメンの類を外で喰ふのは夜中である事が少なからずあつて、我が親愛なる読者諸嬢諸氏には既に賢察の結果は出てゐるにちがひないが、詰り呑み過ぎた帰り路である。立ち喰ひ蕎麦とか夜中の客目当てのラーメン屋とかそんなところで、半分以上は惚けながら麺を啜るわけだ。紳士の姿ではないよね。
 大抵の場合、蕎麦屋ならかけかもり、ラーメン屋なら醤油味を註文する。偶に変化球で掻き揚げ天麩羅蕎麦とか塩ラーメンなど云ふ事もあるが、その時間帯は何も旨い蕎麦やラーメンを喰ひたいのではなく、汁麺を啜りたい欲求がきわめて純化されてゐる状態なので、麺喰ひの立場を云々されても応へやうがない。

 ところで夜中の蕎麦屋には七味唐辛子が、ラーメン屋には胡椒が必ず用意されてゐて、隣の酔客が何かに追ひたてられるやうに、或は自らに課された神聖な義務であるかのやうに、七味や胡椒を振りかける場面は珍しくもなんともない。ひとによつては丼の表面が火星の赤土みたいになるまで七味を振りかけてゐて、私の胃腸は既に老人だから、横で見てゐてもげんなりする事がある。
 あの手の調味料はばつさばつさと振つても旨くない。たとへばお刺身を食べる時、山葵は醤油に溶かないで、お刺身に乗せる方がぐつと旨いでせう。同じ理窟は麺にも当て嵌まるので、もり蕎麦を手繰るなら、食べる分だけに山葵や葱をあしらふのがいい。同じ伝で七味を使ふのも惡くない。熱いのをやつつけるなら、最小の面積に都度都度振れば解決する。かうすればつけ汁(ラーメンならソップ)を一種類の味で濁らせる心配はなくなるだらう。

 そんなのは面倒だと思ふひとに、ばつさばさ振りかけれるのを止める積りは無いとして、折角の蕎麦(或はラーメン)を色々な味で愉しまないのは実に勿体無い態度だし、些か乱暴にも映るばつさばさを好むひとはどうも、カレーライスのルウとご飯と福神漬をぐちやぐちやに混ぜるひとと印象が重なる。カレーライスだつて、ルウとご飯と福神漬をそれぞれのままにするからひと皿の味をヴァラエティに富ませられるので、その嬉しさを棄てるのは野蛮人の謗りを免れない気がする。
 調味料最良の用ゐ方はひと口に使ふ分だけを都度都度で、さうすると意外にうまい組合せを発見出来る事がある。サヴァラン教授いはく、新しい美味の発見は新しい天体のそれに相当するさうで、蕎麦やラーメンが相手なら花やかな新天体まではいかないとしても、小惑星くらゐにはなると見立ててれば工夫のし甲斐も出てくるだらう。蕎麦にもラーメンにも関係ないが、さう云ふ(一種の)パズル趣味で私が発見したのは、牡蠣フライで、ウスター・ソースにタバスコをほんのちよつぴり忍ばせたやつ。少し覚めたやつにこの組合せは絶妙で、麦酒の素晴らしい友になる。
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by vaxpops | 2013-02-15 18:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)
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