いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

13168-0316 本醸造

 お酒の中で"本醸造"と呼ばれる一群がある。

 Wikipediaの該当項目を見ると

■本醸造酒とは、精米歩合70%以下の白米、米こうじ、醸造アルコール及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なものに用いることができる名称である。使用する白米1トンにつき120リットル(重量比でおよそ1/10)以下の醸造アルコールを添加(アル添)をしてよいことになっている。(中略)旨味や甘味にとぼしく、一般的に味は軽くなり、すっきりしたものとなる。

とあつて、何となく惡意を感じるね、気に喰はない。それで月桂冠のページ―偶々直ぐに見付かつたからで、月桂冠には恩も恨みもない―を見ると、

■純米酒に近い香りと風味をもち、しかも純米酒よりは淡麗でまろやかな日本酒です。
■本醸造酒で、味のバランスを整えるために用いる醸造アルコールの添加量は、原料米の総重量の10%未満。

等と書かれてゐる。醸造元だから"旨味や甘味にとぼしく"なんて書けないよね、気持ちはよく解る。

 法律的な視点に立つと「精米歩合70%以下の白米、米麹、醸造アルコール、水を原料として製造され、香味、色沢が良好」で、この場合「醸造アルコールの添加量は白米重量の10%以下(アルコール分95%換算)」なお酒を本醸造と呼んでいい事になる。

 ここで大事なのが"醸造アルコール"でせうね。非常に印象が惡い。正確を期せばWikipediaで括弧書きされてゐるアル添が惡印象の根つこと云つていい。確かに厭な響きですね。不正な方法で贋ものを醸つてゐるんぢやないかと勘繰りたくなつてくる。日本酒界でさう云ふ贋もの醸りをしてゐたのは残念ながら事実だから、惡印象もゆゑなき話ではないのだけれど。

 然し現在の醸造界で云へば、きちんと用ゐる限り、醸造アルコールと惡者をイークォールで直結さすのは、些か短絡ではないかとも思はれる。この辺りは私が云ふより尾畑酒造の"当蔵の醸造アルコール添加についての考え方"に目を通してもらふのがいい。胆の部分を抜くと(強調は私)

酒質が安定する、クリアになる、劣化しにくくなる、といった添加によって得られる効能があるからです。

だらう。一定の量を安定した品質で通年出す為に、醸造アルコールを適宜に混ぜて調整するわけで、考へ方だけを見ればヰスキィのブレンドとこれは同じである。我われが目にする本醸造は云はばブレンデッド・サケなのであつて、少なくとも私と同世代以下の自称・日本酒好きが
「アル添なんか不味くつて呑めない」
と鼻を鳴らすのは無知と見栄の相乗効果だと云つていい。まあさう云つて胸を張る若ものがゐたら、私は静かに微笑むだらうけれど。

 外れのないお酒を呑みたければ、純米酒を撰べばよい。出来れば生真面目に醸つてゐる小さな藏のそれであればなほ好もしく、きつと満足ゆくだらう。然し掘り出す愉しみと云ふ点から見ると、寧ろ面白いのは本醸造の方で、おそらく藏の考へやら嗜好、方向性が一ばんくつきり浮き出るのではないだらうか。

 但し本醸造を撰ぶのが、一種の博打である事は忘れてはいけない。率直に云つて感心しない銘柄もあるわけで、それは無駄遣ひとまつたく同じ意味である。純米酒に較べれば遥かに廉な出費ではあるけれど、我がの目利きが間違つてゐた敗北感は金額が廉である分、大きくつよく感ぜられて仕舞ふ。その辺りも含めて受容れる器の持合せがあれば、本醸造は酒席の大きな愉しみになる事だらう。
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by vaxpops | 2013-05-11 20:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(4)
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Commented by 輪音 at 2013-05-11 21:35 x
醸造アルコールは必要悪的な捉えられ方をされている面が強く、気を付けなければならないのは三増酒とか合成酒かと存じます。

藥くさい酒は厭ですね。

小さな造り酒屋の醸し出したお酒がいいという説には全面的に賛成です。

洋菓子屋さんだって和菓子屋さんだって似たようなことが言えますから。

飛露喜だとか十四代だとか村祐だとか特定の銘柄ばかり売れてそういう酒だけを賞賛礼讚する社会は実に薄っぺらだと愚考します。
Commented by vaxpops at 2013-05-12 10:48
輪音さん。

 知る限りですが三増酒は法的に醸れず(比率の件ですね)、合成酒は料理酒の形でありますが表示が義務付けられてゐるので、お酒として我われのくちに入る心配は無いでせう。
 寧ろその用ゐ方で舌触りや香り、咽喉越し、乾した後のあまみ、その他諸々ががらりと変りところに、呑み助としては注目したいところです。

 小さな藏のお酒には驚かされる事がありますね。
 さう云ふ銘柄を掘り出した時は実に気分が宜しく、うまい一ぱいが更に美味しくなるものです。

 世に出廻る銘柄が不味いわけではありませんが、巷の評判(大体は当てにならない)に踊らされないよう、お互ひ用心して参りませう。
Commented by 輪音 at 2013-05-13 12:28 x
高の井酒造(新潟県)の『雪中貯蔵酒』純米吟醸。
板野酒造(岡山県)の『鬼ノ城』純米吟醸。
機会あらばお試しあれ。
Commented by vaxpops at 2013-05-13 20:13
輪音さん。

 情報多謝。
 機会は運に恵まれれば一ヵ月後にやつてきさうです。
 利き酒会と云ふのは素敵です。
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