いんちきでさらにマクガフィン

by 丸太花道@乳軟部

13250-0398 ぶらナンブ、スタヂアムに行く

 貴君、ナイトゲームを見物に行かうぢやあないかと誘はれて、私はきつと面妖な顔つきをしたにちがひない。野球は突き通る空と沸き立つ雲の下のスポーツで(ゆゑにドーム式球場には否定的にならざるを得ない)
「ナイトゲームは邪道だと思はれるのだが貴君」
「然し貴君、ベイスターズの試合なのだよ」
「それを早く云つて呉れ玉へよ」
 それで新宿から湘南新宿ラインで横濱を経由して関内驛で降りた。新宿も横濱も関内も非常に蒸し暑い。少々分厚いかと思はれた今治タオルが大活躍しさうな気配が濃厚である…と云ふのは不正確で、気配が濃厚どころか既に大活躍してゐる。時計は十七時十五分。驛前には青と赤と少年野球のユニフォームを沢山見掛けて嬉しくなつてくる。

 今夜はハマスタこと横濱スタヂアムで、ベイスターズ対カープのナイトゲームなのである。

 驛前で沢山見掛けるのはユニフォームだけではなく、焼鳥や枝豆や唐揚げ、麦酒にジュースにお弁当を賣る屋台もあつて、小父サンや小母チヤンが
「球場で買ふより廉だよー」
と聲を張り上げてゐて心がぐらぐらした。何とか我慢出来たのは私の意志が堅固だからではなく、事前にお弁当を買ひ込んでゐたからで、それが無ければ間違ひなく球場入り前に罐麦酒と焼鳥で一ぱいを決めてゐただらう。
 そこにやあやあとやつて来たのは改めて紹介するまでもなく、ニューナンブの頴娃君である。今夜の観戦も前回の【13236-0384 ぶらナンブ横濱を行く】かれの幸運にあやかつてなんであるが、今回は互ひに予め時間を作り、試合開始前からの合流である点が大きく異なつてゐる。

 「いやはや暑いですな」
 「試合も熱くなると嬉しいですな」
 とか何とか云ひながら我われは歩き出した。関内驛から横濱スタヂアムは迷子になるのが不可能なくらゐの近さだし、試合開始は十八時だから気分にも足にも余裕がたつぷりある。
 「席はどうなるですか貴君」
 「招待状なのでチケットに交換しないと決らないですが、この時間帯なら一塁側にいけるでせう」
 頴娃君は自信を持つて断言した。根拠はよく解らないが、かう云ふ断定を信じて損をする理由は無い。果してその予言は的中する。

 如何に驛から近いとは云へ、横濱スタヂアムはスタヂアムだから大きな建物である。その周りにはベイスターズ贔屓、カープの応援團、少年野球の子供たち、地元だらう親子連れ、どうやつて時間を捻り出したか不思議なひとびとが大勢ゐて、然しかれら彼女ら皆、これからの試合を見物するお客なのだから気持ちが同じ方を向いてゐる。一見はばらばらな恰好なのに、非常な一体感があつて実に嬉しい。
 招待状をチケットに交換した頴娃君がにやりと笑ひながら戻つてきて
「予定通り一塁側だよ貴君」
手渡されたチケットには"内野指定席A 一塁側 三番ゲート 第十二通路 三十八段 四十七番"と記されてゐる。一ぺんに気分が跳ね上がつた。
 三番ゲートから場内に入り、第十二通路は階段だつたが、これが無闇に段数があるやうに感じられて息が切れた。年齢ではなく暑さゆゑ(第十二通路に空調施設は無かつたのだ)なので念の為、その点は申し添へておかねばなるまい。

 ぜえはあ云ひながらスタンドに入つて驚いた。
 「おお、これは」
 「なんとまた、贅沢な」
 そこは一塁側と云ふより、殆どホームベースの真後ろに位置する最上段で、グラウンド全体をほぼ均等に見渡せる席で、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、こんなに素敵な場所は狙つても中々取れるものではないよ。

 試合前に踊るチアガール。
 応援を促す賑やかな煽り。
 到るところで振りまはされる青いタオル。

 すつかり嬉しくなつてきたところで、麦酒を買つてくるのを忘れてゐたのに気が付いた。頴娃君は油断なく事前にプレミアム・モルツを仕入れてゐる。試合開始にはまだ時間があり、賣り子さんの姿は見えない。麦酒を買ひついでに煙草を吹かさうと一旦、席を外したら、賣店は一階まで無くてうんざりした。横濱スタヂアムには一考をお願ひしたいと思ひつつ、黒ラベルを買つて席に戻り、先づ乾盃した。
 ベイスターズ、カープ双方のスターティング・オーダは既に電光掲示板上には表示されてゐて、それでもホームプレートのところで中畑・野村両監督がメンバ表を交換してゐるのが何だかをかしい。
 「ああ云ふに交換をするのだな」
 と頴娃君は喜んでゐて、私はベイスターズのラインアップに中村紀洋の名前が見当らないのが残念だなあと考へてゐるうちに、試合が始まつた。
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by vaxpops | 2013-07-11 17:30 | ニューナンブ | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 恥丘曲線 at 2013-07-14 21:08
タイトル : モデナの剣
麦酒の最高の肴は、青空のもとでの野球観戦 だけではない。 陽もとっぷり落ち、ハロゲン灯で照らされたスタジアムで繰り広げられるナイター観戦も、双璧として君臨するの。 実感してきた。水曜日の横濱スタジアムのナイトゲーム。 開始前に球場入りできたため、一塁側バックネット裏の好位置を確保。人口灯下では球速が2割3割5割増しに見える!初回から点の取り合い。選手の応援歌もだんだん覚えてきた。中盤で打線が爆発し、横濱の歴史的逆転勝利で球場の興奮は最高潮! もちろん麦酒もハイペース。優秀な売り子さん...... more
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