いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

看板の気合ひ

 "レトロ"好みと称するひとが世の中にはゐる。
 単に"それつぽい"のが好きなだけなひともゐるだらうな。それを商ふ人びとも。どちらを責める積りもないけれど、"それつぽい"のは結局のところ、それだけではないのかなとも思ふ。

 多摩に青梅といふ町がある。奥多摩の入り口のやうな町。ここの賣りが"昭和レトロ"で、映画の古看板を再現さしたり、建物の外観を意図的に古めかしく飾つたりしてゐる。尤も川越のやうに元の建物が古いわけではないから、どうにもあざとさが鼻につく。青梅には長く足を運んでゐないから、今はどうか知らないが、惡くない呑み屋が少なくとも一軒あつて、そこは"昭和レトロ"ではない古ぼけた店構へだつた。呑み屋に限らずああいふお店が並ぶ方がしつくりきやしないだらうか。

 さういふ町の好みは兎も角、琺瑯の古看板を眺めるのは樂しい。銘柄それ自体は勿論、活字の用ゐ方、色あしらひ、宣伝の惹句。現代の目から見て、スマートとは呼びにくいとしても、広告の手段が限られた時代の看板だから気合ひがちがふ。その気合ひを感じながら、ユニオンビールとカブトビールのどちらを撰ぶと訊かれても、すりやあ無理な話。ここは両方を買はなくては(肴はヤマサかヒゲタの醤油でお刺身だらうか)と思はされる。決意させられる。後から作つた…複製した看板だと、とてもぢやあないが、かうはいかないだらう。

d0207559_13224099.jpg
 さうだ。

 この画像はどこだと思はれる方の為に書きつけておくと、伊豆半島の先端にある某町のT商店である。以前にも訪れたことがあつて、その時は年代物の風呂敷を二枚買つた。風呂敷も建物も歳を経たもので、詰りレトロ気取りではなく、本もののレトロスペクティヴ。その向ひが同じ商店の酒屋で本業はこちらである。品揃へも決して惡くなかつたが、ユニオンもカブトも見当らなかつたのだけは惜しまれてならない。

[PR]
by vaxpops | 2017-04-20 13:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : http://zampablack.exblog.jp/tb/24106757
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by lagoonchii at 2017-04-21 00:01
気合ひがちがいますね。
なんという味わいの記事でありましょうか。

レトロという言葉で何が顕わされるかは私にはよく分からないのですが、「時」と言ってしまえば言い漏らしたことは結構すくなくなるようにも思いました。

で、ここにあるのは「酒は大関」ではいかがでしょうか。
ごく最近、酒の曲の写真をとることを課題にしようと目論んでいたのですが、この写真以上のものが撮れそうもないので、大関の曲を諦めざるを得ない気分になりました。
Commented by vaxpops at 2017-04-22 14:55
lagoonchiiさん。

 "レトロ(スペクティヴ)"が何を示すのかは確かに微妙。
 本來は時間の風雪に耐へた物品なのではないかと思ふのですが、どうも"古ぼけた風味"に貶められてゐる気もされます。

 實は本文で取上げるかどうか悩ましかつたのは、大関の隣に鎮座するオーシャンウヰスキーの方で、雄渾な海を思はせる味なのではないか知らと期待されます。
> 酒の曲の写真
は是非とも撮つて頂かなくちやあ。
Commented by stonefree_01 at 2017-04-23 18:10
いやあ、ここは稀少酒を分けて下すったありがたいお店よ。
品揃えは佳いところよ(^^)/
Commented by vaxpops at 2017-04-24 11:45
頴娃君。

 あれあ確かにいい出会ひでした。
 ご縁といふのは大事ですな。
名前
URL
削除用パスワード