いんちきでさらにマクガフィン

by 丸太花道@乳軟部

クレメンティア・デ・ポテトサラド

 以前にも何度か話題にしてゐるが、気にせず書く。文章で口を糊する立場では六づかしからうとも思はれて、こんな時に素人は得をする。尤もプロフェッショナルだつたら、同じ種で一冊の本を書き上げられるかも知れず、さういふ本があれば一讀してみたい。詰りポテトサラドの話。

 ポテトサラドとは何ぞや。

 といきなりなところから話を始めるが、我われの多くはそれを、茹でた馬鈴薯を崩し、野菜や果物を加へて、マヨネィーズで和へたサラドの一種としてゐるのではないか。私はさうである。
 それで幾つかのウェブサイトを見てみると、微妙な差異はあるがおほむね、"茹でた馬鈴薯を主な材料とした"サラドとされてゐたから、ちよいと驚いた。マヨネィーズは必須でなかつたのか。併し"これぞ王道のつくりかた!"と題されたページでは具材(十)対マヨネィーズ(二)を黄金比と書いてあつた。キューピーが提供してゐるから、これでマヨネィーズを使はないのなら、そつちの方が寧ろ驚きだけれど。

 キューピーが主張する"王道の"ポテトサラドでは玉葱(薄切り)、人参(銀杏切り)、胡瓜(輪切り)にハム(短冊切り)を使ふ。マヨネィーズで和へたら塩胡椒で味を調へるさうで、これは確かに説得力がある。日本人が思ふポテトサラドの最大公約数ではないだらうか。他にもコーンドビーフに黒胡椒をあしらふ、鯖の水煮罐を使ふ、胡瓜やパプリカをピックルスにして混ぜ込む作り方の紹介もあつて、流石キューピー、どれも旨さうでこまる。

 そこで最初の結論。味変りのポテトサラドなら毎日でも宜しい。
 かう書くとたとへばマカロニサラドぢやあ駄目なのかと疑念を呈する讀者諸嬢諸氏もをられる筈で、さう断定は出來ないにしても、中々厳しいんではないかなと私は応じたい。それにマカロニの類ひなら、ポテトサラドの具に加へられるだらうとも思はれるのだが如何だらう。
 ここで前述の漠然とした定義が活きてくる。茹で馬鈴薯が主役のサラドであれば、ポテトサラドを名乗れる(可能性が大きにある)ことになつて、たつた六文字のカタカナが示す範囲はこちらが思つてゐより遥かに広い。僅か三文字のカタカナで大きな世界を示すカレーに近しい存在感(ポテトサラドの一部はカレー世界に含まれるのだが)と云つてよく、カエサル曰く寛容即ちクレメンティア…さういふ食べものと云つてもいい。

 但しポテトサラドがカレーと異なるのは、所謂変り種も十分に旨いのだけれど、結局のところはキューピー方式の"王道"に戻る点だらう。天麩羅だの月見だの冷しだのに舌鼓を打ちながら、矢張り最後はきつねうどんでなくちやあ締らないのと似てゐると思ふのは、どこかをかしいか知ら。譬へは兎も角、万人の認める基準があると云へば異論は出ないにちがひない。

 續いての結論。それでも細かな好みの相違は必ず發生する。
 一ばん大きくちがつてくるのは、おそらく(間違ひなく)馬鈴薯をどの程度まで崩すか、といふ点だと思ふ。私はペーストに近いくらゐの食感を好む。ごろごろ方式だと、折角の馬鈴薯が妙に堅く感じられるのが気に入らないからだが、これは馴染みの問題でもあるので念を押しておかう。
 もうひとつは果物を加へるか否かといふ点で、私の周辺では否定的な意見が多いのだが、私は好もしく思ふ。酸味のつよい林檎や八朔を少量入れると、その酸つぱさがポテトサラドの味をふくらまして呉れる。これもまた馴染みの問題と云へばそのとほりなのだが、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏だつて、それは同じでせう。

 序でなので、もつと細かいところを幾つか挙げておくと、玉葱は生より炒めた方が望ましい。香りと歯触りが豊かになる。それからうで玉子も加へたい。堅茹でを小さく潰したの。目立たない程度で彩りがよくなる。またこれは変り種だよと批判されさうだが、枝豆も入れてもらひたいな。ペーストに近しい馬鈴薯好みには、これが歯応へになる。その代りと云つては何だが、人参は要らない。赤の色は隣にトマトを添へれば宜しい。問題はチーズとツナ罐だが、あれば喜ばしいくらゐで留めておかう。あれこれ入れすぎるのはポテトサラドの本來から遠ざかる。

 味つけは矢張りマヨネィーズを基本とする。少量の醤油を隠せば、風味は広がるだらう。色みが惡くなりさうなのが難点だから、別に用意するのが賢明かも知れない。ウスターソース(加へて三滴のタバスコ)やケチャップ、七味唐辛子、或は思ひ切つて味噌の類も同様で、最初の調味に用ゐるのではなく、その気になれば使へる準備をすれば宜しからうと思はれる。ポテトサラドはカエサルの云ふクレメンティアを体現してゐるから、さういふ調味料を受け容れる器がある。

 ただ何事にも例外はあるものだから、ポテトサラド(に用ゐる調味料)にもそれがある。即ち黒胡椒。私はがんらい胡椒の辛みをそれほど好まないのだが、羊肉とポテトサラドは別で、挽きたての黒胡椒との相性は抜群と云はざる得ない。そして黒胡椒を小皿に用意して振り掛けるのは望ましからぬとは改めるまでもなく、珈琲豆と同じく都度挽くのがあらまほしい。
 尤もポテトサラドといふ庶民的なおかずに、どこまで凝るのかと疑問は湧いてくるけれど。そしてこの疑問…黒胡椒ひとつに限らないが…は、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏にも提示して宜しからう。即ち、讀者諸嬢諸氏の愛するポテトサラドは果してどのようなものであるか。私はポテトサラド同様のクレメンティアをもつて、ご意見を伺ふ積りでゐる。
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by vaxpops | 2017-05-12 12:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(4)
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Commented by lagoonchii at 2017-05-12 22:07
たまご、玉子、卵を入れたいのです。邪道でもなんでも。なかなか入っていないので、自分で作らざるを得ず、なのでなかなか食せませんが。例えば、これはもう、たまごサンドウィッチの具ではないか、というくらいにポテトやマヨネーズとの比率が、ポテトサラダの範疇のクレメンティアを越境しそうになっても、許せてしまう、というか、個人的に好ましかったります。が、めったに出会うことはできません。
Commented by vaxpops at 2017-05-14 16:43
lagoonchiiさん。

 たまご乃至玉子或は卵入りポテトサラドが何の邪道になりませう。
 強くまた断然の支持を表明致します。
 たまごサンドウイッチ風のうで玉子を潰したのでよく、スクランブルドでよく、鶏のそぼろに近い煎りつけでまたよく、キューピー式王道ポテトサラドに何かひとつ加へるとしたら、たまごが最良にちがひありません。

 馬鈴薯とマヨネィーズと玉子の比率には議論の余地が残るやも知れませんが、私としては高らかにポテトサラド党たまご派の結成を宣言したいと思ふのです。
Commented by stonefree_01 at 2017-05-15 18:38
すずふり亭のビーコロに敬意を表して、ポテトの代わりにクリームシチューを使う。これが何の蛇道になりませう!
Commented by vaxpops at 2017-05-16 09:56
頴娃君。

 調べてやつと判りましたが、テレヴィジョンからの種は中々六づかしいです。
 ポテトサラドでもマヨネィーズに生クリームを加へる技法があるさうですな。
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