いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

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 貴君、野球見物に行かうぢやあないかと誘はれて断る理由はどこにも無い。それで新宿から湘南新宿ラインで横濱驛を経由して関内を目指した。
 関内驛で降りると空気がざはざはしてゐて、喊声が聞こえる。
 ハマスタこと横濱スタジアムの喊声で、ベイスターズ対ドラゴンズのデイ・ゲームなのである。

 私を貴君と呼ぶのは改めて紹介するまでもなく、ニューナンブの頴娃君で、かれの幸運にあやかつての観戦となつたわけだが、何しろお誘ひが当日な上、前夜の深酒の所為で気付くのが遅れて、だからスタジアムに入つたのは試合の中盤くらゐからであつた。
(うーむ、あたまが重いなあ)
と思ひながら然し私は湘南新宿ラインから京浜東北・根岸線の電車内にゐた筈なのに、球場のシートに腰を落着けた途端

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何はどうあれ、兎も角も麦酒を呑まねば話が始まらないと云ふ気分になつた。三塁側内野スタンドには麦酒の賣り子さんがたくさんゐて、麒麟とアサヒとサッポロとヱビスが確認出来たから、先づはヱビスから。罐麦酒一本分で五百五十円也。勿論ヱビスを買ふ間でも試合は進んでゐるから、大慌てで頴娃君(先に球場入りしてゐて、既に一ぱいを空にしてゐた)と乾盃する。

 うまい。

 すりやあヱビスなんだから旨いに決つてゐるぢやないかと嘯くひとは何も解つてゐなく、首すぢに湿つた陽射しを受け、スタンドの至るところから響く大聲の応援と、何よりフィールドの撰手を肴に呑む麦酒ほど素敵な呑みものはないんである。スタンドは満員御礼とまではいかないとしても、そこそこにお客が入つてゐて、それもまた嬉しい。
 試合を観て改めて感動したのはプロの凄みである。これ計りはテレヴィジョンの画面ではぜつたいに解らない。

 たとへば投球のはやさ。
 或はファウルボールのたかさや打球のすすどさ。
 ゴロを捕つてからスローイングするまでの機敏さ。

 プロ野球は矢つ張りかうでなくちや。私はすつかり昂奮し中村紀洋やラミレスに聲援を送り、さうなると咽喉が渇く。咽喉が渇いたら賣り子さんを見つけて手を振れば来てくれるから麦酒を呑む。今度は五百円のサッポロ。えらく割高だと思ふのは間違ひで、席から動かず(詰り試合見物はそのままに)、健康的な笑顔でお酌してもらへての値段なのだから、適正か寧ろ割安だと理解しなければ嘘であらう。
 「さうではないかね貴君」
 「そのとほりだよ貴君」
 云ふ私も応へる頴娃君も何故だかげらげら笑つてゐる。三杯め(麒麟を五百円で)がからになる頃、攻防は九回に移り、試合はドラゴンズが押し切つた。何となくベイスターズ贔屓になつてゐる自分がそこにゐて、不思議な気分を味はつた。

 関内と云ふ場所が実に都合惡いのは、直ぐ近くが中華街である事だらう。野球見物を終へて夕方のはやい時間帯。どうせ電車は混雑するに決つてゐて、これはもうやむ事を得ない。

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 表通りにはきつと有名なのだらうお店がずらずら軒を揃へてゐて、あちこちからお客を呼ぶ聲が響いてゐる。その喧騒が中々快く、もしかすると野球場のお祭り気分を引き摺つてゐるのか知ら。
 路地に入ると、そのまま箱詰めにしたら素敵な横濱のお土産になるんぢやないかと思へるくらゐ、小さなお店がぎつしり並んでゐる。中華街なのにどう云ふ気分なのかブラジルと云ふ名前の喫茶店を見つけたり、植ゑ込みに堂々と鎮座まします鴉に呆れさせられたりしながら、我われはあるき、写す。私は常用の"石鹸デジカメ"だが、頴娃君はちやんとライカM9を持参してゐて驚いた。

 おそらく半時間ほど歩き廻つた我われに、ところで目的地が無かつたわけではなく、中華街の隅つこに敢て名前は出さないが頴娃君ご贔屓の中華料理屋があつて、そこが狙ひ目である。
 小さな二階建ての二階に潜り込んで、じつくりとメニュを検討する。お店の賣りは焼そばだから、それは外すわけにはゆかない。悩みに悩んで、焼そばはセット(鶏のカシューナッツ炒め、ソップ、杏仁豆腐付)で一人前、それから牛肉の細切りと大蒜の芽の炒めものを撰んだ。
 「麦酒は…ねえ」
 「球場でたつぷり、呑んだからねえ」
 最後に我われは顔を合はせて頷きあひ、流石にそこは遠慮しておかうと意見の一致を見て
「紹興酒(二合)を温めたやつ」
にした。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には色々突つ込みたいだらう。

 このお店の焼そばは一種の固焼きであつて、見た目はごく無愛想である。青海苔もソースも鰹節も乗せられてゐないお好み焼みたいな感じと云へばいい。然し見た目だけで決め付けるのが感心しないのはひとでも焼そばでも同じ事で、中にはたつぷりの熱い餡が入つてゐて、麺も外のかりかり具合とは対照的な潤び方をしてゐる。
 これが実にいい。
 鶏のカシューナッツ炒め(生姜の利かせ具合が宜しい)や細切り牛と大蒜の芽の素敵な相性の良さが嬉しいのは勿論として、いづれも同じ系統ながら、それぞれに異なるうまさなのがよく、それぞれに紹興酒との適ひ方が巧妙なのも喜ばしい限りだが、焼そばの淡泊なのに足元のしつかりした味付けや、口当りの変り具合はそれ以上に愉しめる出来で、お皿が全部ただ白いだけとか、大関の徳利で出される紹興酒とか、お店のお姐さんが日本人の感覚からすると些か無愛想に過ぎるとか、その辺りが纏めて些事に思へてくる。

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 すつかり満足してお店を出ると、高かつた筈の陽は既に姿を消してゐた。
 ゆるゆる歩きながら
 「ところで貴君、不思議なのだが」
 「何でせう」
 「何故我われは紹興酒のお代りをしなかつたんでせうな」
 「や。貴君もさうだつたのですか」
 どうも互ひに、あと一合くらゐ呑んでもいいかなあと考へながら、遠慮してゐたらしい。なーんだとをかしくなつて、次の機会には是非とも紹興酒に遠慮はやめませうやと話が纏まつたところで、驛が見えてきた。
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by vaxpops | 2013-06-30 11:30 | ニューナンブ | Trackback(1) | Comments(4)

13235-0383 使ひ方

 手元にあるニコンのCoolPixS01(白)を私は"石鹸デジカメ"と呼んでゐて、どうもこれは自分の使ひ方に合はないんぢやないかと思ふようになつてきた。いやこの"石鹸デジカメ"が好きかきらひかと訊かれたら、すりやあ好きと応じますよ。きはめて小振りな筐体と割り切つた機能と操作性は、コンパクト・デジタルカメラの正しいかたちを暗示してゐるやうにも思はれるくらゐで。だからここから私が書く事は、あくまでも"私の使ひ方"に対しての話だと考へて頂かなくちやならない。

 一ばんの難点は矢張り"寄れない"事であらうね。
 食べものを撮るのが好きな私には標準の最短撮影距離が半メートルなのはつらい。特に野菜の瑞々しさやらつやつやした魚の脂、グラスを濡らす雫なんてのは狙へない。ズームレンズは搭載してゐるから、それで代用する程度の方法は知つてゐるし用ゐてもゐて、そもそもがその積りでもあつたのだけれど、どうしても無理を感じて仕舞ふ。
 次に挙げておきたいのが一千万超の有効画素数で、これが意外な程のネックになるとは思はなかつた。
 簡単に云ふと"石鹸デジカメ"の素子サイズでこの画素数は多過ぎる。熱心な営業のひとが
「どうしたつて一千万画素以上は必要ですよ」
と会議でつよく發言したのだらうと思はれるが、こいつは軽自動車にトラックのエンジンを載せるのと同じで、非常な無理がある。次世代機があるのなら、画素数は半分くらゐで十分と申し上げておかう。
 更に手振れ補正の事も触れなくちやならない。
 筐体のサイズはほぼ構へ易さの條件に直結する―と云ふか、持ち歩く機械には掌に適ふ大きさがあるもので、たとへばライカ…特にねぢ式ライカを思ひ出せばいい。私がカメラの手振れ補正に否定的だつたのは、適切な大きさなら、ちやんと構へる事でその辺の問題の大部分は解消出来るからで、"石鹸デジカメ"級だとそもそもの前提が崩れてゐるから、強力な手振れ補正は寧ろ必要なのにここが貧弱なのが不思議なのであります。

 それは丸太の使ひ方に難があるんだよ―とすすどく指摘するひとが出てくるだらうな。"石鹸デジカメ"を
「地味な焦点域のズームレンズを載せた、デジタル式の使ひ捨てカメラ」
だと見立てたら、さう云ふ欠点乃至不満は
「何処でも兎に角撮影出来る」
一点ですべて解消される筈だ、と云はれると確かにその通りでその恩恵は確かに大きいのは認めなくちやいけないです。が、その弁護がやや精彩を欠くのは、そんなら(私の場合だと)台湾蝶々ことHTC バタフライにその役を任せりやいいぢやないの、と云ふ反論に弱いからだ。
 "石鹸デジカメ"が多分に意識したのはスマートフォンのカメラで、そこは間違つてゐない。ただ我が手元の組合せに限ると、残念ながら台湾蝶々に勝る点を見付けるのが中々六づかしくつてこまる。別にこまる必要は無く、買ひ替へれば解決するんではないのと思はれると、その見方にはたつた一点
「さう云ふ諸々があつて、それでも何となく私は"石鹸デジカメ"を気に入つてゐる」
と申し上げたい。使ひ方と機能と気に入りかどうかは、それぞれの要件であつて、それぞれの評価が異なるとこんなにややこしいのかと云ふ事を教へられた気分で、その点から考へると"石鹸デジカメ"は面白いカメラなのかも知れない。
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by vaxpops | 2013-06-29 23:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)
 旨い酒を二時間呑める。

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 何がどうして二時間か知りたけれは儂と二時間、呑まう。
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by vaxpops | 2013-06-28 02:00 | 番外携帯 | Trackback | Comments(2)

13233-0381 新宿駅の夕空に

 灯りの点る時間帯。

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 町はこの瞬間だけ、惡くない。
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by vaxpops | 2013-06-27 23:30 | 番外携帯 | Trackback | Comments(0)

13232-0380 謎の牛すぢ

 都内某所で喰べる"静岡風おでん"の牛すぢはばらけた姿で登場する。

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 大坂人の牛すぢは"串に刺さつてゐる"もので、うまいのだけれど、どうしても馴れるに到らない。
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by vaxpops | 2013-06-26 20:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

13231-0379 異端の

 冷たいスパゲッティと云ふのがありますな。冷製スパゲッティとでも呼べばいいのだらうか。何だか気恥かしいね。
 イタリアにもイタリア人にも私は縁が無いから、彼女またはかれが冷たいスパゲッティを食べるかは知らない。知らないから勘で云ふのだが、地中海の長靴の中には無ささうな気がされる。
 スパゲッティは茹であげて直ぐに喰ふのが一ばんうまい。ソースが貧弱でもたつぷりのチーズとバタがあればそれでスパゲッティはいけるので、我われに馴染みのもり蕎麦にちかい。手を掛けだすと切りがないところも。

 たださう云ふ点を考へても、冷たいスパゲッティは矢張り、異端的だと思はれる。蕎麦をマヨネィーズで和へて啜るやうな感じ…などと書くと必ず
「何だつていいんだよ、旨けりやあ」
と茶々を入れるひとが出てくる筈で、間違ひとは云はないとして、然しトラッドな料理のトラッドな食べ方はそれがうまいからトラッドなので、何だつて構はないと云ふ態度は矢張りバルバーリと呼ばれても仕方が無いんぢやないか知ら。

 ところで私の母が用意出来る料理はごく限られてゐて、特に洋食は今でもさうだが丸で駄目で、たとへばシチューと云へばホワイトソースのそれだつたり(実際、初めてブラウンソースのビーフシチューを食べたのは随分後の洋食屋だつた)、フライの類いは冷凍もの、カレーライスもまあ同じやうなもので、だからスパゲッティも例外にはならない。少年期の私にとつてスパゲッティは
「茹でた麺を冷たくして、塩胡椒とマヨネィーズで野菜と和へたひと皿」
であつて、今ふうに云へばサラド・スパゲッティとでもなるのだらうが、そもそも熱いままに食べるトラッドなスパゲッティが出なかつたのだから、私たち家族にはそれがスパゲッティであつた。

 スパゲッティは熱くてうまい。

 と云ふ当り前を実感したのも随分後の外食で、これだけだと如何にも母には具合が惡さうに響くけれど、そんな事は無いのが当然で、今でも母親のカレーライスが私の大好物である事実は動かない。家の味は料理のそれとは別の、然し厳然としたトラッドなのだが、それは本稿で触れる内容ではない。

 えーと、何の話でしたかね。
 さう。スパゲッティの冷たいやつ。

 トラッドなスパゲッティがうまいのを実感してから、異端的な方を啜ると(この下品が赦されるのは他に日本風のミートソースとナポリタンだけである)イタリア人がスパゲッティと呼ぶかどうかは別として、うまいものぢやあないかと再確認出来、異端の愉しみ…と云ふか、異端だつてうまければ構はないとは、多分かう云ふ時に用ゐるのが正しい気がする。
 ―尤も"丸太の實家式冷たいスパゲッティ"にはひとつ、大きな問題がある。サラドめくお皿なので適ふお酒が見当らない事だ。この辺りが異端のトラッドに及ばないかなしさであらうか。
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by vaxpops | 2013-06-25 20:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)
 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には必ずや同意頂けると確信してゐる。

 ツナ鑵とマヨネィーズの組合せは最強である、と云ふ事を。

 細かな点は色々とある。それは勿論であつて、然し先づ私が云ひたいのはその勿論の前提であるところの、ツナ鑵とマヨネィーズ(以下はツナマヨと略す)の組合せ―いや寧ろ合体がうまいのだと云ふ事で、話のすべてはここが起点なのでその積りで宜しくお願ひしたい。

 ツナマヨは用意するのに何の苦労も要らない。何しろ適当に油を絞つたツナとマヨネィーズを和へれば出来るのだから、事実上、料理ですらない。ただツナ鑵とマヨネィーズにどの銘柄を撰ぶかで意外なくらゐ味が変るのは面白く、何を加へるかでどこで使へるかが異なつてくるのも面白い。

 一ばんポピュラーなのは醤油をつんつんと垂らす事だらうか。つん垂らしやちよと混ぜならケチャップやソースでも当然いける。七味唐辛子を振つたりタバスコを忍ばせるとツナマヨの柔らかい感じに刺激が加はつて、これもまたよいものだ。

 調味料では余りに安直過ぎると思ふ向きには、玉葱や胡瓜、ハム、茹で玉子(但し堅茹でに限る)辺りは如何だらう。刻み方和へ方分量で見た目も歯応へも大きく変る。特にここで玉葱の果す役割を小さく見てはならない。薄切りにして水に晒したのを使ふか、微塵にして炒めたのを用ゐるかで、出来上りは丸でちがつてくる。

 その出来上りを少し計り彩るなら、たとへば揉み海苔、或は刻んだパセリが宜しからう。胡麻を散らしたり、針生姜を飾つたりすると工夫の度合ひが高く見えるに相違無く、小鉢につんもり盛れば高々ツナマヨが
「急なお客さまへの手軽な一品」
くらゐにはなるのではないか―まあ実際のところ、"急なお客さま"に戸惑はされる場合は殆どなからうし、"急なお客さま"が無闇に多い家ならその辺の準備は常に万端だらう。そもそもツナマヨは生真面目に用意するのでなく、何となく、漠然と、麦酒のお供…或はパンの恋人、でなければご飯の惡友…として偶々あるくらゐで丁度よい。家では絶対に食べられない料理の対極に堂々と立つてゐるのがツナマヨであつて、かう云ふ食べものは案外と少ないんぢやないのか知ら。
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by vaxpops | 2013-06-24 23:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)
 実際のところ酎ハイと云ふのは妙な呑みものだと思ふ。これは多分、"焼酎のハイボール"の省略で、ハイボールがヰスキィのソーダ割りだと云ふ事を思ふと、余計に妙な感じがされる。豚肉の焼鳥みたいなものか。ここで更にややこしいのは"サワー"と云ふのがある事で、あるお店で訊いたところ
「炭酸で割つてゐるのがサワーで、さうでないのがハイです」
と云はれて、ハイはハイボールを略した筈なのに炭酸入りではないなんて、もう何がなんだか解らない。仕方がないから本稿ではハイもサワーも同じだと考へるとする。などと文句を附けた割りに、酎ハイは私の大いに愛好する呑みもので、それは廉価だからなのも勿論あるが、何がなんだか解らない分、変にヴァリエイションがあつて、その辺が嬉しい事情もある。

 一ばんポピュラーなのは檸檬でせうね矢張り。続くのがグレープフルーツだと思はれる。この二種類に限つては"生"があるのも酎ハイのお約束で、特権階級みたいな扱ひに見えなくもない。この両巨頭を追ふのがお茶のグループだらう。烏龍茶、緑茶、抹茶。些か特殊な例を挙げるとうつちん茶やさんぴん茶(茉莉花茶)等もあつて、個別には太刀打ちが六づかしからうとしても、系統で見ると一大勢力と呼んでいいのではないか知ら。と云ふより酎ハイと聞いて頭に浮ぶのはこの辺りまでで、オレンジやカルピス、幾つかのベリー系、柚子、或はシークァーサーと云つた柑橘系を真つ先に思ふひとは少数であらう。この手の変り種酎ハイで一ばん大笑ひしたのはガリガリ君をそのままはふり込んだガリガリ君サワーだつた。
「当りが出たらもう一ぱい」
なのだけれど、あんなに外れを願つたのは後にも先にもその時だけだ。

 ところで酎ハイのヴァリエイションを眺めると、存外に淡泊…おとなしいものが多いと気付く。酎ハイの素に用ゐられる焼酎がほぼ無味無臭なのを考へると、あの味や色みは殆ど割りもの由来と睨んでよく、大体本式の真面目な焼酎なら生かオンザ・ロックでやつつけるのが一ばんうまい。それで酎ハイが割りものに頼るところまではよしとして、そもそも酎ハイは廉価にアルコールを愉しむ小市民の工夫だから、肴を撰ぶやうな味ではいけない。もつの煮込みや鯖の〆たの、或は谷中生姜は勿論として、何やらの炒めものだつたり、かにやらのサラド、その他の蒸しもの、諸々の焼きものに最善とは呼べなくてもそこそこに適はなくてはならない。これが日本酒や葡萄酒、泡盛にヰスキィ、歴とした焼酎では考へられない酎ハイの特殊さで、きつい主張のそれが殆ど見当らないのはさう云ふ事情ゆゑかとも思はれる。

 然し幾つかの廉な店で酎ハイを試してみると、意外なくらゐ味が異なるのが解つて、これが面白い。おそらく区別し易いのは檸檬だらう。焼酎の濃さ、割りものの甘みと酸味、炭酸のきつさと云ふ四つの組合せでここまで変るのかと感心させられる。冷静に骨組みに注意すれば酎ハイは"焼酎ベースのカクテル"と見立てる事が出来るわけで、だとすればお店毎に様々の味があるのも不思議ではないのだけれど、腰が落ち着かなくつていけないからカクテル云々は頭から振り払ふとしませう。そんな事より酎ハイに似合ふ肴について改めて考へるのがいい。如何に酎ハイの(余程の変り種でもない限り)撰べる肴の幅がひろいとは云つても、元が焼酎なわけだから、似合ひの肴の範囲はある程度に想像が出来る。

 臓物全般。
 揚げ物、焼き物。
 煮込みもの。

 味付けは醤油や味噌で、しつかり染み込ましたのが好もしく、たとへば獣肉なら"元が何だつたのか、ちよいと不安になる"くらゐに煮崩れてゐるのがいい。何年まへから鍋に入つてゐたか想像してはいけなささうなおでん、なんてのも惡くない。さう云ふ肴をちよぼちよぼつつきながら檸檬の酎ハイを空にして、次は烏龍茶のにするかグレープフルーツかとひとり酔つ払ふ夜と云ふのも、淋しげな男の背中に似つかはしい情景ではありませんか。
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by vaxpops | 2013-06-23 23:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

13228-0376 何ゆゑに

 保存してあるのかよく解らない画像、と云ふのがある。

 これもその中の一枚。

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 「悔ひ改めるンは後でもでけるけど、目のまへで要る銭は後廻しにでけンのや!!」
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by vaxpops | 2013-06-22 23:30 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

13227-0375 扱ひ

 串焼きを肴に呑んでゐて思ふのは、獅子唐は不当なくらゐひくく評価されてゐるんではないか、と云ふ事。

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 尤も感心出来るほどうまい獅子唐の串焼きを出すお店を私は知らない。

 あの風味を殺さないやうに焼くのは、きつと可也りの技術が要求されるのだな。
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by vaxpops | 2013-06-21 23:30 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)