いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

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1241 祖母の棒鱈

 干し堅めた鱈を柔かく戻して、甘辛く味附けしたのを棒鱈と呼ぶのだが、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏にはご存知だらうと思ふ。
 知らなければ、あたしは若僧なのだなと考へてもらひたい。
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 ところで私にとつてこの棒鱈は"お正月に食べるもの"なんである。
 祖母が健勝の頃は戻すところからの手作りで、所謂お節料理が苦手だつた…今は煮焚きものが嬉しい年齢なので、さう云ふ事も無くなつたが…少年にとつて、實に嬉しい食べものだつたのだな。
 それが毎年、記憶にある限りざつと三十年余り續くと、どうしても外せなくなつてくる。
 うまいのはうまいとして、それ以上に"約束事だから無いとこまる"食べものの地位を得てゐるからで、私の周辺を見てもここまで登りつめた食べものは他に見当らない。
 流石に百歳近くになつた祖母は、棒鱈を焚けなくなつて久しく、今でも毎年のお正月には棒鱈が必ず登場するけれど、さう云ふ意味では既に殿堂入りを果してゐると云つてもいい。

 もし神さまがひとつだけ、我儘を叶へてくれるなら、祖母が丹念に焚き込んだあの棒鱈を、お正月の食卓に乗せてもらひたいものだと思ふ。

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by vaxpops | 2014-11-30 18:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

1240 お燗と豆腐

 肌寒さを感じる頃、熱いのをちよいと、引つ掛けるのはまつたくのところ、嬉しい。

 含んだ瞬間、くつと眉根が寄つて仕舞ふのが、自分でも解るくらゐ、嬉しい。
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 然し案外見過ごされてゐさうに思ふのは、初冬の明るい時間、外で呑むお燗酒で、こいつもまたうまい。

 駄目な呑み方と云はれれば認めるのは吝かでないとして、然しこれをまづいと云へるひとは、余程にひねてゐるか、そもそもお酒を呑めないひとではないかと思ふ。

 画像はご覧の通り、澤乃井で。

 肴にあしらつた"豆腐の燻製"は、チーズに似た食感と豆腐の淡泊がまことにうまい。
 そのままでいいのは勿論、山葵醤油があれば、"豆腐味のチーズのお刺身"とでも呼べる不思議なうまさを堪能出来る。

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by vaxpops | 2014-11-30 12:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

1239 北の雪と短い梢

 先達てニューナンブで甲州に行つた。これは数少ない讀者諸嬢諸氏には既にご存知の筈だが、いきなり何かの弾みでここに辿り着いた、幸運か不運かは私の知るところではないとして、さう云ふひとには簡単な事情くらゐ、説明した方がよいかも知れぬと思ふ。
 その甲州に足を運んだ理由は呑む為で、詰り葡萄酒が目当てであつた。と書いて、丸太は葡萄酒に詳しいとか一家言あるとか思はれるのは迷惑だから予め云ふと、詳しくはないし一家言の持合せも無い。なのでそつちの話題に期待してをられるひとは、直ぐに別のページをご覧になるのが宜しからう。

 二泊したホテルで呑んだのはフルボトルが三本(赤一種と白二種)とお酒の四合壜が一本で、私だけが呑んだのではなく、ニューナンブの相方頴娃君と平らげた事は念を押しておかう。

 それで二種類の白とお酒は事前に冷蔵庫に入れてゐたのだが、これが面白い体験のきつかけになつた。生酒や白の葡萄酒は冷すのがまあ、一般的ではないだらうか。多くの場合はそれで旨くなるのだから、正しいかどうかはさて措き、誤りとは呼べない気がする。
 然しお酒と白の一種は、大して旨く感じなかつたのだな。いやこれを、まづかつたと理解されては困りますよ。旨いまづいで云へば旨い。ただそれが平均点の旨さだつた…さう感じられたと云ふ事である。因みにお酒…詰り北の雪は頴娃君の、葡萄酒…即ち短い梢は私の撰択であつた。

 ところがなのだ。
(失敗では、なかつたな)
と評しつつ二杯三杯と呑んでゆくうちに、段々うまくなつてくるではないか。口に含んだ時の広がり、喉を過ぎた後、ついと昇る香り…些か単調で物足りなく感じてゐたところが、どんどんふくらんできて驚いた。
 考へられる理由の第一は、ごく簡単に酔つてきたと云ふ事だが、酔ひが廻ると味は曖昧になるのだからこれはをかしい。
 次に考へられる理由は、愉快を感じてゐた事で、これはありさうなのだが、ニューナンブの酒席が詰らなかつたためしが無いのを思ふと怪しい気もする。
 となると残りで考へられるのは、もしかしたら冷蔵庫から出した計りの冷たさが第一印象を惡くさせたのではないか、と云ふ事になつて、ここでお燗酒を持ち出すのは唐突に感ぜられるだらうか。
 半年くらゐ前のお酒のイヴェントで、お燗酒を楽しみませうとかそんな一角があつた。ニューナンブは冷酒好みが多数派なのだが、私はお燗にも興味津々なので早速試してみたら、同じお酒が温度でまつたく異なつたのに一驚を喫したのをよく覚えてゐる。

『香りや味はひを最もつよく感じる温度つて云ふのがあるんですよ』

 感心しましたね、その時は。旧式の居酒屋にはお燗番と云ふひとがゐて、文字通りの係だつたとは言葉としては知つてゐたが、それがどれだけ大事な役目だつたかを實感出来たと云つてよく、同じ理窟が冷酒或は白葡萄酒に通用しない道理があらうか。
 葡萄酒にはデキャンタと呼ばれる硝子の器があつたのを思ひ出した。赤葡萄酒を容れる為のもので、少し空気に触れさせる事で(葡萄酒は酸化をきらふ酒精だけれど、それは“急激な”のがいけないので、適度であれば許容されるさうだ)、風味を落ち着かせる目的に用ゐる。その風味に温度が含まれるのは寧ろ当然と考へるべきで、矢張りその考へ方が冷酒ないし白葡萄酒に当て嵌まらない道理はない。

 詰り最初に感じた物足りなさは、必要以上に冷したからなのだな、と云ふ事に気が附いたのは呑みながらの場で、私にしては悟りがはやい。そこで早速、上の事を頴娃君に話したのだが、かれは
「その通りだよ貴君」
と到つて冷静な対応で、何だか釈然としない。大發見ぢやあないのかなと思つたが、そもそもかれは北の雪も短い梢も最初の一ぱいから、これは旨いよ、好もしい味だと呟いてゐた。すすどい味覚だなあ。

 尤もここで居直れば、少々遅れはしたが、私だつて気は附けた。それに味の変貌に驚けたのだから、その分は得をしたと強弁出来なくもない。…まあ次に北の雪と短い梢で酒席を催す機会に恵まれれば、その夜は、最初から旨い温度で呑める準備を怠らないだらう事もまた、疑ひの余地が無い。
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by vaxpops | 2014-11-29 09:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

1238 夜鳴き

 呑んだ後の〆には、拉麺だよね。

 と云ふ意見に私は必ずしも同意する者ではない…あれが麺類の中では“格がひくい”とは、以前に何度か触れてゐる…が、たまに啜ると妙にうまい事がある。
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 尤も何やらかにやらと能書きの附けられたのには丸で興味が無くて、その辺の拉麺屋で数百円程度の、ごくありきたりな醤油拉麺がうまい。塩や味噌を啜らうと思はないのは何故だらうか。

 出汁がどうとか麺がかうとかそんな話をされても当方はまつたく判らない。煮豚が分厚ければ嬉しくなる程度で、ややこしい事に気を附ける食べものでもないし、そこが拉麺の値うちではないか知ら。

 然し同じならたぬき蕎麦の方が有難いのが偽りのない本音でもあり、さう思つて眺めると、意外なくらゐ夜中の蕎麦屋が少ないのは残念と云はざるを得ない。
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by vaxpops | 2014-11-28 16:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

1237 隣は何を

 ひとりで呑む夜或は夕方に愉快な肴は色々あるとして、格別愉しいのは

『隣の席の会話』

ではないだらうか。聞き耳を立てるほど熱心ではないとして…その余裕があれば自分の呑む分に集中するよ私は…何しろライヴのB.G.M.だからね、實に面白い、と思はれる時も無くはない。
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 漠然と聞いてゐると、稀にこちらの下顎を擽るやうな話題が出る事もある。向ふは呑んでゐる。私も呑んでゐる。こちらが笑ふとあちらも笑ふ、事もまあ無くはないわけで、さうなると話が弾む、場合もある。いや別に期待してゐるわけではなく、結果としてさうなるのだから、余禄みたいなものである。

 然し隣席がお連れ様ありとは限らず、それぢやあ肴が減るのかと云へばさうと計りも云へなくて、そのお客がお店のひとと話し込んでゐると、同じ風な流れになる。事もある。

 然し不思議なもので呑んでゐるお客は、お店のひとを無條件に信用する癖があるらしく、端で聞いてゐて大丈夫なのか知らと不安になる事もある。勿論こちらは聞いてゐない顔だし、かう云ふ場で中身をぶちまける眞似もしないけれど、あけすけ過ぎるのは考へものですよ。

 まあ中にはたちの惡いひともゐなくはない。妙な具合に酔つ払つてゐたりして。そんな時は耳を塞ぐわけにもゆかないから諦める。B.G.M.が無くても呑めないわけではないからね。お店を出るのも方法だが、そこまでひどい目に遭つた経験は皆無に等しく、かう云ふのも人徳の一種だらう。酒の席、隣は何を、呑むひとか。
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by vaxpops | 2014-11-28 11:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

1236 ぽつり

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 石畳に黄葉が一枚ぽつり。

 秋の名残りを惜しむのか。

 冬をうれひ春を願ふのか。

 ただ石畳に一枚の黄葉が。
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by vaxpops | 2014-11-27 07:00 | 番外携帯 | Trackback | Comments(0)

1235 リスト

■DeMartino Reserva/醸造所未確認
 往路のあずさで。小壜。

■塩尻ベーリーA ミズナラ樽/サントリー
 登美の丘の有料試飲。

■銘柄不明(赤 2014)/サントリー
■銘柄不明(白 2014)/サントリー
■銘柄不明(微發泡ロゼ)/サントリー
 三種共見学後の無料試飲。

■ジャパンプレミアム メルロ(2012)/サントリー
 登美の丘のレストランで。フルボトル。

■ジャパンプレミアム 甲州(2013)/サントリー
 宿泊先で。フルボトル。
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■YamanashiベーリーA(2011)/勝沼醸造
■ルバイヤート/丸藤葡萄酒
■十二原メルロ(2013)/大和葡萄酒
■Katsunuma KOSHU/シャトレーゼ・ベルフォーレ
■LaForet/白百合ワイナリー
■シャルドネ樽発酵(2013) 醸造所未確認
 以上は勝沼ぶどうの丘で有料試飲。

■長野メルロ(2012)/メルシャン
■長野シャルドネ キュヴェ・アキオ(2013)/メルシャン
 いづれもシャトー・メルシャンの有料試飲。
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■甲州きいろ香(2013)/メルシャン
■甲州きいろ香 オマージュ・ア・タカ(2012)/メルシャン
■甲州きいろ香 キュヴェ・ウエノ(2013)/メルシャン
■長野シャルドネ アンウッデッド(2012)/メルシャン
■北信シャルドネ(2012)/メルシャン
 すべて見学時無料試飲。

■一文字短梢 甲州 キュヴェ・タンザワ(2013)/メルシャン
■登美の丘(赤 2010)/サントリー
 宿泊先で。どちらもフルボトル。

■ひょいとワイン(白)/マルキ葡萄酒
 帰りの特急列車で。カップ。

 どれもこれもうまかつたが、印象深かつたのは十二原メルロ。注目したいのは甲州のおそらく栽培に工夫を凝らしただらうキュヴェ・タンザワ。後者はリアルタイムの時に些かからい感想を持つたが、温度が落ち着くと感心する味になつたので、ここでそれを取消すと共に、今後何年かを掛けて、追ひかけたいと訂正したい。

 それから画像はリアルタイムの時に使つたのを再利用してゐるので、ご容赦をば願ひます。
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by vaxpops | 2014-11-26 19:45 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

1234 針生姜

 中野の[昭和の感覚が色濃いお店]の附出し。

 ここの料理は何を食べてもまちがひないのだが、針生姜のあしらひが巧妙な事を特筆したい。
 濃いめの味だと口のなかをすつきりさせるし、淡泊ならあはさを引き立てる。
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 一体に私は生姜が好きで、牛丼には紅生姜をたつぷり乗せるし、ソース焼そばに添へられたのが少なければ不満を感じるし、冷素麺には当然欠かせないし、お寿司でがりと呼ばれてゐるのも、谷中生姜を味噌でやつつけるのも、甘酢に漬けたのも、天麩羅も大好物なのだが、煮炊きものにあしらふのは、生姜を用ゐたのが解つてもそれが際立つてはならず、中々六づかしいのではないかと思ふ。

 かう云ふのをちよいとつまみながら呑んで、愉快にならない夜があるとしたら、それはとても不幸な時間ではないだらうか。
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by vaxpops | 2014-11-26 07:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)
 画像は勝沼ぶどう郷は[ぶどうの丘]の建物地下に設けられた試飲場所。全部ではなからうが、甲州の主な葡萄酒醸造所の主な銘柄は、ここで試せさうな感じがされる。
 入口で利き酒…いや恰好よくテイスティングに用ゐるタートヴァン(レストランの葡萄酒係が首から下げてゐる金属製の小さなお皿)を購入して、諸々の葡萄酒をやつつけるわけだ。持ち馴れない物だから、どうにも試飲が広口のお猪口でお酒を啜る様になつて仕舞ふのが我ながら情けないが、二種三種と試すうちにそんな事はどうでもよくなつてくる。
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 さうしてゐるといきなり美女に
「師匠」
と聲を掛けられて、たれかと思へば、東中野で[時折り足を運ぶ葡萄酒バー]の常連嬢だつたからびつくりした。びつくりした拍子に、さう云へばそのお店の企画で、お客を連れての勝沼葡萄酒バスツアーがあつたのを思ひ出した。忘れてゐたわけでなく、偶然会ふ事になつたら面白からうなと考へてゐたのだけれど、まさかそこまでの偶然は無いと決め附けてゐて、だからびつくりしたのかも知れない。
 慌てて周りを見渡すと、成る程そこかしこに見知つた顔(詰りそのバーの常連嬢及び氏)がゐらして(やれバスに乗つてゐなかつたねだの、ひよつとして走つて連いてきたのだの、散々揶揄はれた)、勿論マスターのK氏…かれは私が別口で甲州に行く予定なのを事前に知つてゐた…もゐて
「丸さん、なーにやツてンですか」
「まさか本当に会ふとは思つてなかつたから、驚いてンですよ」
さう切り返すと、K氏は大きく笑ひながら
「またまた。僕たちに会ひたかつたんでせう??」
「うはは。ばれましたか」
予想外の事に愉快な驚きを感じながら、[ぶどうの丘]を後にする段になつて、仕舞つたと思つた。くだんの常連嬢に“師匠”と呼ばれた時、こちらは
「君みたいな不出来の弟子は持つた覚えが無い」
とやり返すのだが、すつかり忘れてゐた。偶然て、怖いものだなあ。

 私はハプニングの瞬間のアドリブがたいへん、苦手なんである。
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by vaxpops | 2014-11-25 21:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)
 いづれも山梨県立美術館に併設されてゐる芸術の森公園で。
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 公園の名附けは首を傾げざるを得ないけれど、文字通りの燃える紅葉は讃嘆に値する。

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by vaxpops | 2014-11-25 16:15 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)