いんちきでさらにマクガフィン

by 丸太花道@乳軟部

<   2016年 06月 ( 31 )   > この月の画像一覧

 目新しいメニュがあつて、何となく気をそそられると、取敢ず註文する。
 といふのが私の基本なのだが、何にせよ例外はある。たとへば我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、"やきたまご"と書かれて、それを何も訊かずに註文する勇気の持合せがありますか。
d0207559_6534875.jpg
 私には、ない。
 謎のロシヤ人タマゴスキー男爵を自任する立場として、こんなに興味深いメニュもさう中々見当るものではないといふものです。

 「焼き物のね、準備をする時に」と大将は如何にも何気ない口調で「離したところに生卵を置くわけよ」
それで様子を見ながらちよいと廻してね、さうさなあ、一時間くらゐか知ら。
 茹でるのでなく、焼くのでも炒るのでも揚げるのでもなく、弱い火でじつくり…ゆるゆると炙つた結果が"やきたまご"で、大将曰く
「まあ、塩でせうね。好みに適ふなら、檸檬をちよいと、搾つて」
d0207559_6534889.jpg
 そのまま。
 塩。檸檬。
 塩に檸檬。

 茹で玉子に近いのだけれど、茹で玉子のやうにもつさりした口当りではなく、肴になるかと訊かれたら首を傾げる事になつて、併しうまい。

 一日のどこで、何をあはせて食べればいいのだらうかと煩悶しながら、タマゴスキー男爵は"やきたまご"を平らげたのであつた。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-30 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(4)

1929 まことに無愛想

 お酒のラベルは大体花やかになる。ひとでいへば顔になるのだから、当然だらう。自分のこのみがはつきりしてゐる場合は、裏側をじつくり讀み込むのが望ましいのだが、それはこの際、本題ではない。

 さて画像の話。
d0207559_723782.jpg
 まことに無愛想で、理科室のビーカーに貼られた薬品を思はせる。
 何かの實験に使ふのか知ら。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏の中にさう感じるひとがをられたら、その印象は半ば以上正確である。
 何故かと云へばこれは發賣前のお酒で、銘も何も決つてゐない。かういふ原料でこんな風に醸るのですと示す以外に情報がなく 、解り易いといへばその通りだけれど、これで人心を奮ひ立たす事が出來るかと訊かれたら、疑問符をつけざるを得ない。

 含むと非常ににかるい。かるみのあるお酒は私の好みなのだが、率直なところ些か物足りない。厳しく云へば些か頼りなげ。何故だらうと考へるまでもなく、成長の途中だからで、さう考へれば頼りなげはちよいと、酷か。
 今のままでも鱸のお刺身や冷や奴、後は精々厚揚げのやうに淡泊な肴があれば旨いだらうとは思ふ。何度か試飲を繰り返したのだから、決してまづくはない。要は気になるわけで、矢張りこれは夏を過ぎてからの味はひを樂しみにしたい。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-29 07:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)
 お酒の醸造には幾つか(或は幾つも)の段階があり、その段階を経る毎に味が変る。ごく簡単に云へば成長と熟成で、ばらばらだつた、もしくはごちやごちやだつた味はひが、好もしく纏まる過程だと考へてよく、これは醸造酒…ひいてはお酒全般に通用する。さうなると途中でその変貌の具合を確かめるのは、お酒醸りの大切な作業だと理解出來るし、その途中を試せる機会が稀な上に贅沢だといふ事も想像がつく。詰りマスケティアズ…不肖"ポルトス"丸太と"アラミス頴娃君"…は[呑み切り]と呼ばれるその機会を得たんである。
d0207559_16294943.jpg
 銘柄を挙げる前に、改めて[呑み切り]は何かと云ふと、これは
『この冬製造され貯蔵中の清酒を少量取り出し、酒質と熟成の進み具合を評価する大切な』
行事である。当日にもらつた簡易なパンフレットにさう書かれてゐて、まことに解り易いね。作業でなく"行事"と呼ぶくらゐだから、仕事ではあつても、どこかに本來の宗教的な感じがされて、よい気分になれる。

 それで今回の"行事"に登場したのは次のとほり。

①純米 大辛口
②純米 本地酒
③本醸造 生酒
④奥多摩湧水仕込
⑤蒼天(純米吟醸)
⑥春ノ雪(純米吟醸/無濾過/生/ささにごり)
⑦生酛 純米吟醸

 市販用と呑み切り用が準備されたのは①から④の銘柄。市販/呑み切りの順に利き猪口(持ち帰らしてくれた)で確かめる。銘柄を変える前に和み水で口の中を洗ふのは当然の態度だと思つてもらひませう。
 市販用といふのは販賣されるものだから、当り前に考へるとその銘柄の完成形で、完成形だから一ばんうまい。筈なのだけれど、"製造され貯蔵中"の未完成、不完全もまた決して惡くないのは驚いた。ことに私が面白がつたのは ③本醸造 生酒の呑み切りで、生酒の性質もあるのだらうか、やんちやな性格が、一番汲み/しぼりたて(この藏の新酒のさらに濾過前。年に一ぺんしかありつけない)が連想された。

 併し實のところ一ばん私を悦ばしたのは ⑥春ノ雪だつた。銘から解るやうに本來は如月頃に限定で出す濁り酒なのだが、少量を(わざわざ)残して登場さしたのである。濁り特有のあまみは緩やかで舌触りも落ち着いてゐる。出たての頃とは味はひが異なつてゐるのだらうと想像し、想像すると牛蒡や大根の煮物が慾しくなつてきた。
d0207559_16294791.jpg
 揚げ出し豆腐に一驚を喫したマスケティアズは福生驛から歩を進めた。既に"ダルタニアン"G君は踏破してゐる酒造場を目指す為で、同日中にふたつの藏を訪ねるのは、ニューナンブ≒マスケティアズ史上初の暴挙…ではなかつた快挙である。

 規模はごく小さい。白壁の藏は立派なものだが、それはお酒を醸るのに必要な大きさで、酒造場といふ会社の大きさを示してゐるわけではない。尤もお米と水と麹と天候といふ自然を相手にする場合の規模を思ふと、これくらゐでなければ適切の範囲を超えさうにも考へられる。

 この藏でも重視するのは水だつた。奥多摩の水を引き、その水が許す量のお酒を醸つてゐる。商ひとして見れば些か厳しい事もあるにちがひないが、さうしなければ銘は堕ちて仕舞ふし、堕ちた銘を立て直すには世紀単位の時間がかかる事を思へば正しいし、望ましい判断だと云つていい。尤も敷地は十分に広い。中には当代(十六代目。但し酒醸りを始めたのは九代目からださうだ)の家もあつて、さう云へば入口には表札が出されてゐた。元は庄屋といふから、土地の名士だつたのだらう。

 前半の名残りがあるから、存分に味はへたかの自信はない。なので大掴みな印象を記すと、きつい癖をきらひ、特別ではない食事に似合ふお酒のやうに感じられた。これは大したもので
「うちのお酒は、毎日呑んでもらふのがいいのです」
といふ自負が潜んでゐる。これに多摩の川魚を焼いたのがひと皿あれば、一日を完璧に締め括れるだらう。

 二種類の試飲は小さなコップに自分で注ぐやり方で、見學に同道したお客の美人が"アラミス"頴娃君に
「よかつたら、お入れしませうか」
注いでもらつた時の嬉しさうな顔つきを揶揄つたら、その美人がこちらにもどうぞと勧めてくれた。だから"ポルトス"丸太の顔もしだらなく緩んで仕舞つた。

[PR]
by vaxpops | 2016-06-28 11:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)
 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には既にお馴染みだらうと思ふから、敢てどことは云はないが、奥多摩で晝めしをしたためた。
 お豆腐が賣りのお店で、奥多摩でうまい豆腐が作れるのかと訝しんではならない。あすこは綺麗な水に恵まれてゐるから、眞面目に作ればまづい豆腐になる方がをかしいんである。
d0207559_6544593.jpg
 そこでは丁度、お酒を用ゐた梅酒を奨めてゐたから、 最初に小さなグラスで一ぱい、振る舞はれた。冷した梅酒は食前酒によく似合ふ。
 それから冷や酒。見るひとが見ればお分かりにならうが、これは小澤酒造は澤乃井の[蒼天]である。純米吟醸の生だから、まづい筈がない。實際のところ、マスケティアズが呑んだ澤乃井のお酒の中で、この銘柄の量が最大だと考へてよい。添へられたのは山葵を微かに利かせた伽羅。
d0207559_654457.jpg
 我われ…即ちマスケティアズの"アラミス"頴娃君と"ボルトス"丸太が註文したのは[揚げ出し豆腐御膳]である。画像のとほり、篭にお盆、更にちまちまと小鉢が並ぶ様はまづ眺めて愉しい。
 小鉢の中で出色だつたのは手前の鹿尾菜。おそらく梅酒の漬け込みで使つた何かかにかを用ゐたのだと思つたがよく解らない。かういふ工夫は解らないくらゐが好もしいし、これは何ですと訊くのは野暮な態度といふものでせう。
d0207559_6544699.jpg
 併しマスケティアズを仰天さしたのは主役の揚げ出し豆腐じたいであつた。
「これは何だね貴君」
聲をあげたのは"アラミス"頴娃君で、唐突にさう云はれても、こちらは解らないよ。
 それで食べてみると確かに驚かされた。うつすらとした衣には歯応へがあるのに、豆腐はなめらかになだらかに蕩けて仕舞ふ。蕩けて仕舞ふのだが大豆…豆腐の味はとろりと舌にのこる。
「これは何かね貴君」
問ひ返さざるを得なかつた。仮にこれが揚げ出し豆腐だとして、そんならこれまで食べてきた揚げ出し豆腐は揚げ出し豆腐ではないわけで、ならばあれらは何と呼べばいいのか知ら。

 といふ事を考へたのが後になつてからなのは強調の必要もないだらう。[蒼天]を味はひ、揚げ出し豆腐を味はひ、小鉢を味はひ、詰り存分に愉しんでゐたわけで、旨いものを呑み喰ひする時、それ以上は寧ろ邪魔になる。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-27 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

1926 花の奥多摩

 この時季、奥多摩の方向にはめつたに足を運ばないのだが、機会を得ればそこに否やをつける理由はない。
d0207559_143529.jpg
 雨粒がのこる花びらに、処女の指先を思ふべきだつたか、或は年増の艶肌を連想するのが望ましかつたか。
d0207559_1435315.jpg
 かういふ情景を目に出來るのだから、偶さか早起きして遠出するのも、惡くない。まつたくのところ、惡くない。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-26 14:45 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

1925 定義の謎

 メニュには三角定義と書かれてゐた。
 偶々隣にゐたおぢさんが旨さうに喰つてゐたので、何か知らと思つて註文したら、油揚げが三角になつたやつが登場した。
d0207559_5565981.jpg
 かろく焙つてあり、料理の工夫が巧みな女将さんいはく
「生姜なんかで試してみたんですけど、これが一ばん適つたので」
と、七味唐辛子をたつぷり振つた醤油が添へられてゐた。それでつまむと、油つ気が控へめなところに、七味入り(振り?)醤油がいい具合で、これは確かに生姜では妙になつて仕舞ふだらう。

 うまいものだつたが、どうして定義なのかは訊くのを忘れた。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-26 06:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

1924 パインアップル問題

 肉とパインアップルは似合ひの組合せだと私は思つてゐる。

 たとへば酢豚。
 たとへば豚の角煮。
 或はピザのサラミ。

 無くてこまるかと云はれたら、さうでもなからうけれど、添へられてゐる方が嬉しいし旨い。
 私はさう思つてゐる。
 …まあ、さう思はないひとだつてゐるだらうし、さういふひとはきつと、ポテトサラドに林檎を混ぜ込むのだつて厭がるにちがひない。
d0207559_5492215.jpg
 併し何故パインアップルは肉との相性がよいのか知ら。
 よく聞くのが、肉を柔らかくするのだといふ説だが、どうも正確ではなささうに思ふ。予めパインアップルをすりおろしたたれに漬け込むなら兎も角、画像のやうなあしらひだと、そんな効果は期待出來ない。

 寧ろ考へられるのは味はひだらう。甘ではなく酸の方で、変化と奥行きを持たす事が出來るのではなからうか。ハムに胡瓜、キヤベツ、トマト、レタス、玉葱をマヨネィーズで和へる時、酸つぱい八朔を加へると、幅が広がつて實にうまい。
 ポテトサラドだつて酸みの強い林檎を刻み入れると、他の甘みをぐつと際立たせて矢張りうまくなる。ゆゑにパインアップルが同じ役割を果してゐるといふ推測は、無理筋ではないと思はれる。

 但しパイン鑵は残念ながら無理筋で、世間のひとの批判はここに端を發するのではなからうか。結論は十分な比較を待つてからとしたい。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-25 06:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

1923 意外なほどの

 お燗酒のコンテストがあるなんて、初耳だつた。勿論それは旨いお燗酒を世に知らしめる目的で開催されてゐるのだが、昔はお酒を冷して呑む習慣はなかつた筈だから、何かをかしい気がしなくもない。

 考へてみたら、お燗をつけて呑む機会には滅多に恵まれない。田町の某居酒屋では時節を限つて鰭酒を出すから、それは必ずやつつけるのだけれど、それ以外で自分からお燗を望む事もなささうで、これもまた不思議である。

 ふた昔くらゐ前の社員旅行の宴会を思ひ出しませうと云つたのはお燗酒コンテストを主催する団体の小父さんで、續けて云ふには
 「ああいふ場では、お燗の徳利を十本とか、纏めて註文しますでせう。それでそのままはふり出して、冷めて仕舞つたのを呑む」
 「これでお燗酒を旨いと思へたら、その方が妙な話ぢやあないでせうか」
まつたくもつて、その通り。大聲を張り上げる眞似は控へたけれど。
d0207559_5371985.jpg
 三種の銘柄はいづれもコンテストで一ばんを取つたさうで、これらが常温とぬるめのお燗で提供された。
 つまみに用意されたのは生ハム。
 ハム自体は感心出來るものではなかつたが、赤身の部分と脂身の部分、赤身に香辛料をきかしたものの取合せ。これが意外なほど、お燗に似合つたから驚いた。お酒の奥行きはまだまだ深い。

[PR]
by vaxpops | 2016-06-24 05:45 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

1922 刺す

 肉を焼いて塩で喰ふのは人類に一ばん馴染みの深い調理法ではないかと思ふ。匹敵するのは貝殻に満たした海水で魚を煮立てる事くらゐではないだらうか。火と塩が我われのめしの基本となつてゐるのは現代でも変らない。

 併し"何かに刺した肉を焼く"となると話は異なる。すすどく尖つて火につよい素材とそれを肉に突き通す技術乃至手法が要求されるからこれは可也り高級な調理法ではあるまいか。たれが最初に試したかは調べる余地もないけれど人類史上初の串焼きは絶讚と共に迎へられただらう
d0207559_761662.jpg
 次の大転換は何者だつたかと想像するとひとつには調味料でもうひとつは組合せではなかつたかと思ふ。私としては肉と野菜と一緒に串で焼く工夫を劇的だつたと評したい、カレー・ライスを混ぜずに喰ふのと同じくらゐ偉大な發想ではないか知ら。比較していいのかどうかは解らないが。

 画像はその偉大な發想の成果のひとつ。豚のばら肉と葱を串に刺して塩胡椒で焼き上げるのは原始的な調理法の極端な洗練で流石に我らが古代人もかういふ思ひつきは浮ばなかつたにちがひなくそれだけでも現代に生れた値うちがある。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-23 07:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

1921 メンチではなく

 ミンチカツと私は呼ぶ。
 断然且つ断乎としてミンチカツと呼ぶ。
 たれが何と云つてもミンチカツと呼ぶ。

 どうしてもメンチカツと呼びたいなら、精肉賣り場でも合挽メンチとかメンチ肉と呼び、喧嘩の時には"手前エをメンチ肉みたいにしてやる"と啖呵を切つてもらひたい…と思ふくらゐ。

 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏の中には、数日前にとんかつの話をして、早々ミンチカツを話題に上げるのかと思はれる向きもあるだらうが、とんかつとミンチカツはまつたく別ものとして扱ふのが本道である。

 呼び方の議論はさて措くとして(ひと言だけ添へれぱ、"メンチ"はミンチの東京方言的な転訛だと思ふ)、ミンチカツはうまい。
 どちらかと云へば、下品…いや失礼、庶民的な食べものですね、あれは。カツレツの下位互換ではなく、コロッケの(少し)贅沢版のやうな位置づけではないでせうか。

 下品…ではなかつた、庶民的である以上、ナプキンをつけ、ナイフとホーク("フォーク"でないのは、[たいめいけん]初代の書き方の眞似である)で型通りに食べても旨くなからうと推測が出來る。有り体に云へば齧りつくのがミンチカツの醍醐味なので、どうにも私は好みが偏つてゐるね。

 予め辛子を混ぜたソースがいい。香辛料が際立つのは好ましくないから、辛子は少なめ、香りがほんのり感じられる程度で。
 これを衣の上から、たつぷり。
 そして大口で囓る、囓りつく。
 衣の堅いところ、ソースで潤びたところ。熱くて少し辛くて、まつたくのところ、たアまらない(テキ屋の親爺だつたかがこんな賣り聲をあげてゐたと、池波正太郎の随筆に書いてある)とはこの事ではないか知ら。

 たたこの"たアまらない"ミンチカツにも弱点が無いわけではなく、組合せが非常に六づかしい。ごはんのおかずには些か不釣合ひの感があるし、酒席に似合ふかと云へば、しつくりし辛い。
 もしかすると散歩の途中に肉屋を見つけ、そこで幸運にもミンチカツを揚げてゐれば、それを買ひ込んで、更に罐麦酒の一本も買つて、手近な公園のベンチでやつつけるのが、最良の味はひ方かも知れない。
d0207559_6505754.jpg
 とは云ふものの。

 さうさう都合よく、散歩中にミンチカツを揚げてゐる肉屋が見つかるとは限らない。仕方がないからかういふ場合は、廉な呑み屋に足を運ぶ事にする。これはやむ事を得ぬ次第なのを、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、諒とせられたい。
 廉な呑み屋でもミンチカツは揚げてから出すのが本道だから、註文して出てくるまでに少し時間が必要なのは云ふまでもない。なので併せてポテトサラドかもつ煮を頼んでおくのがよい。どうです、我ながら讀みのふかい判断だなあ。

 ちまちまと摘まんでゐると、ミンチカツが登場するだらう。心の動悸を抑へつつ、(少なくとも見た目は)悠然と、ソースを調へる。もう少しだから我慢し玉へ。
 ソースの準備まで進めればしめたもので、後は衣を潤びさして、存分に頬張ればよい。口の中が熱くて堪らなくなれば、素早く呑まう。かういふ場合は酎ハイが好ましい。檸檬だと甘過ぎるから、烏龍ハイか緑茶ハイ、或は素の酎ハイで。

 …いやどうも、優雅でも何でもない話になつて仕舞つたが、これは私の嗜好だからどうにもならない。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏に、同じ嗜好をお持ちの方がをられれば、ミンチカツをつまみながら、一ぱいを愉しみませう。
[PR]
by vaxpops | 2016-06-22 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)