いんちきでさらにマクガフィン

by 丸太花道@乳軟部

不幸中にして幸ひなり

 縁があつて大宮の鐵道博物館に足を運ぶことが出來た。かつて大坂弁天町の交通科学館に熱狂した子供だつた私が、再び熱狂したのは改めるまでもないでせう。
 さうさう。縁があつたといふのは[光のほそ道]といふサークルのオフ会で、オフ会といふ言葉は好みではないのだが、それは些細な問題。かういふ機会を用意してくだすつた方々には感謝しなくてはならない。何しろ埼玉には地縁を持つてゐないのだもの。

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 鐵道博物館については贅言を擁する必要も無いでせう。なんだそれはと思はれる方はご自身でお調べなさい。流石に万人向けとは云へないけれど、数寄者にはたまらない空間である。
 大宮驛からニューシャトルでひと驛。殆ど目の前と呼べる立地は非常に便利。ごく短い通路の天井にはダイヤグラムが、床には時刻表があしらはれてゐて、顔がにやけてくる。傍目には妙な小父さんだつたにちがひなく、お客の少ない平日だつたから怪しまれずに済んだ。

 入場料金は1,000圓ぽっきり。
 プリペイドカードに似た形状で、改札口を通るやうにして中に入る。

 手前にあるのは蒸気機関車。そこから電気機関車、旧式の特急列車が並び、一ばん奥手に新幹線がある。入口から見て右手側には別扱ひの空間が用意され、そこには御料列車が展示されてゐる。
 うーん、エエなあ。
 と思ひながら歩くと、不意にがしやんと大きな音が聞えた。見ると山形新幹線の鼻つ面のところに、係員(と呼んでいいのだらうか)が何人か集まつてゐて、何やら話しあつてゐる。
 「何をしてゐるんですか」
訊くと、連結部の出し入れの動作がぎくしやくしてゐるらしい。本來はカヴァがスムースに開閉するのに、どこかが引つ掛かつてゐるのか、動きが途中で停まつて仕舞ふ。
 「こりやあ、開けないといけないかなあ」
などと呟きが洩れたから、簡単なメインテナンスでは済まないのかも知れない。たいへんだなあと思ひながら、併しかういふトラブルは狙つて見られるものでもないと考へ直した。さうして撮つたのがこの一枚。

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# by vaxpops | 2017-01-22 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

特別急行列車

特急列車には夢がある。

漠然としたあくがれと。

果てない旅への憧憬の。

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特別急行に乗つて今夜。

片道切符で乗つて今夜。

あの町へ行かうよ直ぐ。

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雲雀が僕なら朱鷺は君。

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# by vaxpops | 2017-01-21 12:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(6)

すつくり

 海老蟹の類には興味がないから(きらひでもないのだけれど)、蕎麦屋で天麩羅を註文する機会は少ない。こちらの舌の事情なので、蕎麦屋には何の問題もない話。

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 但し天麩羅の種によつては大きにそそられるのも事實で、品書きに野菜の天麩羅(盛合せ)があつてそれを頼まないといふ撰択は中々の困難に属するのではなからうか。

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 あはせたのは生粉打…キコウチと讀むのださうな…と呼ばれるがつしりした一枚。江戸人好みのかろやかさには欠ける分、如何にも古風な舌触りが宜しい。ぬる燗一本とすつくり平らげた。
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# by vaxpops | 2017-01-21 09:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

隠語

 ニューナンブ(マスケティアズ)には妙な隠語を使ふ癖がある。

 たとへば寫眞を撮りに行つた時、合流の時間と場所を決めて別行動に移るのは"野田方式(またはノダスタイル)"と呼ぶ。千葉は野田で初めて採つたことに因んでだが、今では"イエローキャブ"になつた。或は全員が集まる酒席を称して"クリルタイ"もさうだし、日本を代表する某寫眞機会社をF社N社O社と呼ぶのもさうかも知れない。何故かキヤノンはキヤノンと呼ぶけれども。

 惡癖ですね、これは。
 隠語を嬉しさうに使ふ連中は大体のところ、碌でもないのが通り相場で、いやニューナンブが碌でもないかと云へば、直近のクリルタイで訪れた酒藏直営の某居酒屋で新酒の四合壜を(もしかすると一本半くらゐ)平らげる程度だから、さうでもない筈だが、隠語は本來
『その世界…業界にゐないひとに知られない為の言葉』
であるから、我われが用ゐるのはをかしいとも云へる。大体イエローキャブなんて、聲に出すのが恥づかしいよ。

 尤もさういふ暗号めいた言葉を使ふのは、男子の心をどこかしらくすぐるもので、我が親愛なる讀者諸嬢よ、私は貴女を敬ふ者だが、これ計りは女子の入る余地はないのです。
 それで気がついたのは、我が宿醉ひ仲間であるところの頴娃君で、かれは頑固なお酒至上主義者である。それも生酒原理派といふ過激思想の持ち主で、穏健な私とは相容れない…従つて時に激烈な闘争になることもある…部分があるのだが、併し不思議なことに肴への興味がうすい。

 確かに吉田健一が教へるとほり、お酒は肴がなくても樂しめる飲みものではあるが、肴があればもつと旨くなるのもまた世界の眞實で、私は後者を支持する。かれのやうに酒精もつまみも十分に味はつてゐれば、後は目で愉しむだけになるのかも知れないが、それは味はつてからの態度であらう。今のところ私には無理だな。
 併し頴娃君には肴に限つて、"通人が好むところ"を平然と踏み躙る瞬間がある。こちらは古めかしいから、お酒なら豆腐や厚揚げ、或は畳鰯にお漬け物だと思ふのを、かれは平気で鶏の唐揚げを組み合はす。初めて目にした時はびつくりしたなあ。こちらは脂つ気なら白子や肝と決めつけてゐたのち、当り前の顔で食べるんだもの。適ふのだらうかと思つた。

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 さういふ疑問を感じたのは事實として、何度かその姿を見ると馴れるのもまた事實であつて、慣れは不思議なものだから、一ぺん試してみたくもなつた。それで新幹線のぞみ號の乗客になる機会を得た際に試してみた。
 惡くないね、これは。
 福耳…ぢやあなかつた、[横笛]といふ比較的淡白な銘柄をあはしたのがよかつたのか。唐揚げは衣に(少々あざとい)大蒜の匂ひがあつて、隣の席にゐた妙齢の女性には些か申し訳なかつたが、口の中のそれを洗へる感じは葡萄酒ではちよいと味はへない。常用に足る組合せとは呼びにくいと注意書は必要として、特急列車で二時間の独り酒席でなら、この"アラミス・スタイル"は採用しない理由はないと判つた。大きな収穫であつたが、隠語を作つて仕舞つたのは余分の仕儀だらうなあ。
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# by vaxpops | 2017-01-20 07:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

筍パンチェッタ

 と題に入れて仕舞つたから、それ以上に加へるところが殆どない。
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 さうだ。品書きに"燻製パンチェッタ"とあつたのを見て、旨さうだなあと呟いたら、そろそろ顔馴染みになつたお店の大将が
「旨いよ」
と切り返してきた。その口ぶりが自信あり気で嬉しさうで、こちらもちよいといい気分になれたのは、申し添へていいかも知れない。
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# by vaxpops | 2017-01-19 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

新世界カオス

惡趣味な看板を立ち並べ飾り立ても赦される

ひよつとして我が邦唯一の場所かも知れない

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何しろまあ"新世界"なのだもの

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# by vaxpops | 2017-01-18 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

天王寺カオス

厩戸王が見たら、目玉を剥くんではないかと思はれる。

もしかして顔を輝かせ、列に並ぶかも知れないけれど。

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# by vaxpops | 2017-01-17 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

ひと皿なンぼ

お任せでひとり前。

それとお酒を一本。

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# by vaxpops | 2017-01-16 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

キツネソバ

 きつねそばといふ食べものがこの世に在ることを知つたのは、山下洋輔が書いた"ピアノ弾き"のどれかだつたと思ふ。海外ツアー中のトリオが日本食に餓ゑて
『薬罐一杯、キツネソバのつゆを飲みたい』
と呻く箇所があつて、当時の私は大坂の少年だつたから、ジャズマンは不思議なものを食べたがるのだなあと面白がつた。何せ大坂だもの、きつねといへば饂飩で、その頃の年寄りの一部は信太とも呼んでゐた。どうして信太なのかはご自身でお調べなさい。役に立たない知識がひとつ、身につくから。

 初めてきつねそばを啜つたのはいつだつたか。東に下つてからなのは確實だから、前世紀末か今世紀初頭なのはまちがひなく、眞冬の有樂町か新橋だつた筈だ。立ち喰ひなのは勿論である。それも外の風が吹き込んでくる、しよぼくれた、古典的或は伝統的な立ち喰ひで、思ひ返すときつねそばの初体験に最高だつたね。
 東京風の鰹節と醤油の効いた濃いお出汁も、からくて薄くて堅いお揚げ…きつねうどんのそれはあまく厚く、あくまでも軟らかい…も、足元をくぐり抜ける寒風も、骨の芯が冷えるのに耐へかねてたつぷり振りかけた七味唐辛子も、この場合はすべてよい作用をもたらしたのは冷静に考へるまでもなく、詰りそれ以來、ピアノ弾きが書くところのキツネソバに私は好感を抱いてゐるのだな。

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 尤も抱く好感の量の割りに、きつねそばを啜る機会は多くない。食事とするには貧弱だし、おやつと扱ふには労働の気分が濃い。漠然と平日の午后、何の気なしに立ち喰ひ蕎麦屋の暖簾をくぐるのがよささうにも思はれるのだが、その漫然の午后を得るのが六づかしい。外國で何週間か過ごせば、漠然も漫然もなく、啜りこむ機会は出來さうだが、それぢやあ割高にもほどがある。
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# by vaxpops | 2017-01-15 07:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

骨身

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寒い夜には熱いものを。

といふ心の動きの結果。

揚出し豆腐に熱燗をば。

これぞ理想的の組合せ。

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# by vaxpops | 2017-01-14 09:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

備忘の為の

 画像のこれがえらく旨かつた。

 昆布だけでなく、胡瓜やら何やら色々と入つた粘りのある仕上りで、山形県の"だし"の山葵版とでも見立てればいいだらうか。
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 お蕎麦の藥味で。
 にうめんや冷奴に乗せて。

 勿論そのままつまんで、お酒のお供にするのもよかつた。熱いごはんにも似合ひではあつたが、ちよいと辛みがきつく感じられたか知ら。

 "信州安曇野"の触れ込みにたがはず、信濃の会社が作つてゐるのを確かめて、何となく嬉しくなつたし、丸高といふのは中々よい名前ではありませんか。
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# by vaxpops | 2017-01-13 07:45 | 画像一葉 | Trackback | Comments(2)

緑の不思議

ビーフ。

ポーク。

チキン。

マトン。

ベジタブル。

シーフード。

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全部パクチー味になつてゐさうな気も、まあされなくはない。

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# by vaxpops | 2017-01-12 08:45 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

ビフカツビア

 大体"カツサンド"といへば"トンカツのサンドウィッチ"なのである。その證拠にハムカツを使ふ場合はちやんと、"ハムカツ"サンドと呼ぶではありませんか。併し"カツレツのサンドウィッチ"全般を"カツサンド"と呼ぶとすれば、トンカツでもハムカツでも海老カツでも、"カツサンド"を称して問題になるわけではない。
 ただここで忘れられがちになつてゐるのではないかと思はれるのかビフカツで、ええ、わざわざ念を押すと、ビーフ・カツレツである。東都では殆ど目にしない。好みに差違が出るほどこの國で肉食が盛んだつたとは思へないが、牛肉が無闇に威張る地域と豚肉が愛される地域が實際にあるもので、随分以前にも触れた記憶があるのを気にせず云ふと、上代の牧畜と食肉の関連といふ興味深い課題になると思はれるのだが、無學な私だから既に重厚な研究があるのか知ら。
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 まあさういふ話はどうでも宜しい。いやどうでも宜しいと書くのは眞面目な研究者に礼を欠く態度だから、今回の稿とは直接的の関係がないとしておきませう。
 詰りビフカツである。
 カツレツがカットレットと呼ばれてゐた時代…ざつと明治の頃と考へればいいのだが、最初はビーフだつたらしい。ごく大雑把に云つて、細々とではあるが牛は日本人に縁があつた。蘇とか酪とか、聞いたことがありませんか。あれはチーズと生クリームとバタの中間といふか、未分化の状態を示す食べもので、時の帝から臣に下賜された記録も残つてゐる(さうだ)し、牛養…ウシカヒといふ名前もあつた。また牛車が用ゐられたことを思つても、牛は我われのご先祖にとつて遠い家畜ではなかつたといつていい。肉を喰ふところまでは到らなかつたかも知れないけれど。

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 肉を大つぴらに食べるのは明治帝が詔を出してからの話で(わざわざ宣言しなくてはならなかつた事情を想像すると、明治政府の初期はかれんだつたとも、悲痛だつたとも云へなくもない)、さて詔を聞いた臣民の頭に何の肉が浮んだらう。兎や鶴、川獺。地域によつては猪辺りはこつそり喰つてゐたか。ただ獸肉は我らがご先祖にはどうも臭ひがきつく感じられたらしい。明治人の文章には竹皮に包まれた肉に味噌が添へられてゐたと書かれてゐて、臭ひ消しですね、これは。獸肉を料る技術が未成熟で、味噌で誤魔化しつつ烹るくらゐしか手がなかつたのではないか。
 そこに洋食がやつてきて、バタだのクリームだの新奇の香辛料だのもまた、厨房に登場する次第となつた。我らがご先祖の中に頭のいい洋食屋の親仁がゐただらうとは疑念の余地がない。一ばんの發明はフライに天麩羅を応用さしたことで、トンカツで大成する"厚切りの肉にたつぷりの衣"はどうも日本式に翻訳された洋食らしい。そのごく初期を彩つたのがビーフ・カツレツだつたのは、西洋人が牛肉を好んだ事情もあるとして、そこには上代以來の牛に馴染んだ名残りも関りがあつたのではないか知ら。そのビーフ・カツレツがビフカツになり、サンドウィッチになり、私の目の前に登場する。かういふのを称して、幸せであり満足といふのだな。明治の先人に敬意を表し、ビアを一本、開けるとしませうか。

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# by vaxpops | 2017-01-11 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

例の前置き

 實家の最寄りになる驛が阪急電鉄の上新庄で、そのひとつ大坂梅田寄りに淡路といふ驛がある。伝承だと菅原道眞公が配流の折り、淡路島と誤解したのが地名の起りださうで、今は猥雑にごちやごちやした町だが、菅公の時代は茅渟の海がその辺りまできてゐたのだらうか。
 地形は兎も角、菅公流罪の道のりに淡路上新庄近辺があつただらうとは想像出來て、小さな證拠を挙げると、菅原といふ地名がある。それに實家の近くにある松山神社が祀るのは道眞で、濃淡は知らず、何かしらの縁がなければかういふ具合にはなりさうにない。
 さうなると(上)新庄といふ地名が気になつてくる。"新"の字から判るとほり、これは本庄(荘)…今も本庄市などがある…に対しての新庄(荘)で、詰りそれに照応する地名があらうと思はれるのだが、知る限り近所には見当らない。さう極端に離れた土地で本と新があるとは考へ辛いし、異なる事情があるのだらう。
 ここで少々訝しく思ふのは、淡路の周辺は川湊だつただらう点である。規模は兎も角、商業地の役割を果してゐた筈で、荘園といふ租を吸上げるだけの役割を負はされる場所にはどうも似合はないものが感じられる。道眞の頃…九世紀後半…には事實上崩壊してゐた制度だと考へても、流通で儲けられるほど経済が成熟してゐた筈はなく…さういふ考へが現實的に成り立つのは室町期以降ではないか…、どこかかう、しつくりしない。

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 とこの辺りまでが前置き。
 何故こんな前置きになつたかと云へば、古い…或は古からう…地名を見ると、その土地の上代が漠然とであつても想像が出來るからだ。案外と忘れられがちではないかとも思ふが、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、それはあなたが住まはれる土地でも事情は変らない。少しの歴史的な知識と一枚の地図があれば、出無精になりがちな季節の恰好の娯樂になる。
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# by vaxpops | 2017-01-10 08:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

誇り高い背中

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新幹線の車内清掃はわづか七分間。

仕事への誇りを象徴するのは背中。

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# by vaxpops | 2017-01-09 09:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

イエメン

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 上から順に。

 素饂飩(後からおぼろと生姜を加へた)

 お蕎麦(信州安曇野わさび昆布乗せ)

 最後が"寄せ鍋の翌日、残つたお出汁(と具)で炊いた"中華蕎麦なんだが、ラーメンではない。ぽん酢で味を調へもしたし。ではどう呼べばいいのかといへば、何とも六づかしく、旨いかと訊かれたら、舌には馴染んでゐるよと応じる他にない。兎にも角にも麺であつて、敢て云ふならイエメンだらうか。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏のお家にも、さういふ一品があるのではないか知ら。
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# by vaxpops | 2017-01-07 17:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

馴染みと旨み

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 尊敬する内田百閒によると、舌に馴染んだ味とうまいまづいはどうやら別の扱ひであるらしい。普段は呑まない上等の樽詰のお酒は旨いけれど、普段から呑みつけない分だけ感心せず、結局は
『いつも呑んでゐる壜詰』
に軍配を上げたさうだ。何となく解るなあ。ロジカルに説明するのは六づかしい。だからロジカル方面は敬シテ遠ザケルのだが、百閒先生に説得されるのは、説得されるだけの経験があるからでそれが画像である。

 廉な牛肉をあまからく炊いたの。
 麦酒のつまみになる。
 ごはんにも中々適ふ。

 だから決してまづくない。まづくはないとして人様に奨められるかといへば、さうでもないかなあとも思はれる。

 そんなら食べなくてもいいのかと訊かれると、当然そんなことはなく、出てこなければ落ち着かない。詰り私の舌に馴染んでゐる。

 これをごく上等の…たとへば三田牛で同じものを作つたとして、さて満足出來るかどうか。
 旨いに決つてゐるのは想像するまでもないが、食べつけない分だけ感心出來ないのではないかとも思はれる。
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# by vaxpops | 2017-01-06 15:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(4)

うまい麦酒

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 十四歳のころに知合つたから、既に三十年を過ぎてゐる。友人の話である。かれは今、姫路から更に上つた土地にゐて、こちらは東都だから、滅多に会ふ機会を作れるわけではないが、年に一ぺんは会ふ。
 何をするといふことでなく、午后を漫然と歩いて、時に寫眞を撮り、それから呑む。但しお酒はほぼ登場しない。かれと私の間で共通するのは麦酒とヰスキィだから主にそちらであつて、そこで何か贅沢な銘柄を撰ぶわけでもない。
 互ひにひと付合ひが広いとは云へず、好むところは近しいから、さういふ点で話は大きに弾む。尤も近しいといつても、捉へ方や考へ方の立ち位置…多少の文學的な修辞が赦されるならば色彩…がちがふ。だから時に議論めいた場が出來る。
 「中學生のやうな」
青臭さだねえと顔を見合せ、苦笑ひを浮べたくもなるが、それは年ふりてといふ感慨(それとも感傷?)に近く、それ自体は避けるべきとも避けたいとも思はない。矢張り感傷だらうか。

 "ツールとコンテンツ"に対しての差違…おそらく理系と文系のロジカルのちがひ…、または重心の掛け方の異なり具合が實に愉快で、さういふ話題を肴にした麦酒が旨かつたのは云ふまでもない。
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# by vaxpops | 2017-01-05 09:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

長閑ナ春で御坐います

 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏に、謹んで新年のご挨拶を申し上げる。

 旧年はうまいお酒と肴と人びとに恵まれた。

 本年も更にすてきな酒肴に恵まれるだらう。

 そしてまた愉快な人びとに恵まれるだらう。

 讀者諸嬢諸氏よ、酉ノ年も相変りませず、賑々しいご贔屓を賜ります様、御願ひ奉ります。
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# by vaxpops | 2017-01-01 09:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

身も蓋もない年の瀬の

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 [しらんがな!!]つて胸を張られても、こつちもまた知らんがな。もしかすると姉妹店で[どないやねん!!]と[なんでやねん!!]があるのかと思つたが、どうやらさうでもないらしい。残念かどうかはまた別の話になるけれども。

 オーサカだねえ…『ダイ・ハード』冒頭でのブルース・ウィリスのやうにが呟きながら歩いてゐたら、参考になるのかならないのか判断に苦しむ献立看板があつた。

 うどんやそば、丼物の"色々"はさておき、おかずも"色々"で括つた揚げ句にシチューだけ(然も赤文字で!)飾つてゐて、どこに基準をおいてゐるんだらう。シチューが目立つのは"ハイカラやからね"といふ"エエ加減な理由"かも知れない。

 大坂は年の瀬に到つて変らず身も蓋もない。序でに底もないのだが、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には、さういふ些事に気を取られず、穏やかな年越しを迎へて頂きたい。
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# by vaxpops | 2016-12-31 09:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

或る夜の酒席

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 京橋といふまちは東都にもあるが、ここでいふのは大坂の方。東西の京橋に共通するのは地縁がうすいことだが、まあそつちはどうでもいい。
 西の京橋は酒場の乙女嬢の云はば庭で、だから足を伸ばしても安心出來る。お店の名前を挙げるのは控へるとして、實にうまい立ち呑みに案内してもらつた。
 それが画像の上段で、奥にあるのが突きだしなのかサーヴィスなのか、げその天麩羅。それから鮪の中おちとうで海老。他に食べたのは蛸のお刺身に玉子焼き、湯豆腐。麦酒、樽酒、濁り酒。

 場所を変へて、そこは酒場の乙女嬢いはく
『葡萄酒を呑ますお店』
の筈だつたが、最初に目に入つたのが何故か黒糖焼酎(泡盛もあつた)で、数奇者としては註文せざるを得ない。
 それに紅生姜の天麩羅。東都でもなくはないが、刻んだのを掻き揚げるのが殆どだから、一枚ものを目にして矢張り頼まない撰択はありえない。大皿に盛られた天麩羅がざつと焼き上げて出されたのはまつたく旨かつたが、うす仕立てのお出汁があればと(贅沢にも)思はれた。

 そこから天満に行つた。環状線で二驛だから、何といふこともない距離であるが、わざわざ移動したのはこちらの註文。以前に案内してもらつてうまいお店だつたから、再訪したいとのお願ひをしてゐたのだ。
 入るまでに一軒、立ち呑みなのだか角打ちなのだか判然としないところでお酒を一ぱい。ひどく混雑してゐたから、人気なのだらう。銘柄の揃へも中々宜しいものだつた。
 お目当てで食べたのは〆鯖に万願寺。画像にあるこの万願寺がまことに結構だつた。淡泊といへば淡泊、明瞭といへば明瞭な味はひで、この複雑な火の通し方は感心に値する。感心に値するといへば、かういふ旨い肴を出すお店を(何軒も)知つてゐる乙女嬢を先に挙げるべきか。まつたくのところ、いい気分で醉つぱらつた。
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# by vaxpops | 2016-12-30 19:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

サンドウィッチと罐麦酒

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 この場合はサンドウィッチを先にする方が正しい…のではないかと思ふ。この際だから"先にするべきだ"と云つておかうか。断定したところで、たれもこまらないだらうし。

 たれもこまらないだらうから、もうひとつ加へると、特急列車の乗客になるのなら罐麦酒は欠かすわけにはゆかないし、その時に最良となる組合せこそサンドウィッチではないか。八百屋お七に小姓の吉三、トリスタンとイゾルデのやうなもので、私は何を云ひたいんだらう。

 ところで特急列車内で罐麦酒にあはせるサンドウィッチは、一体何がいいのか知ら。

 ツナはうまいけれど、気分がありふれすぎるのが難点か。ローストビーフなんてのもあるが、逆に重々し過ぎる。海老なんぞをあしらつたサラド(風)だと手が汚れさうだ。何しろ特急列車に乗るのだ、さういふ気遣ひはしたくない。
 ハムカツではどうだらう。私はあの廉な食べものをこよなく愛するが、ちつと場違ひな気がされる。かといつてトンカツだと食事に近しくて、罐麦酒の気軽さが相殺されて仕舞ふ。どちらも旨いのに、残念だなあ。

 さうなると、トーストにハムとチーズ、胡瓜にレタス、うで玉子、トマト辺りで辛子入りマヨネィーズを用ゐるのが宜しからうかといふ結論になる。ありきたりで詰らないね。気を衒つてあはないよりはよいとするか。
 そこまで考へると、英國式を気取りたくなつてきて、實践するとなると先づ罐麦酒の代りに紅茶が顔を出す。それにサンドウィッチもバタと胡瓜に塩…詰りキューカンバーになる。いや決して惡いものではないのは知つてゐるんだが、あれは矢張りトランプを繰りながらつままないと、様にならない。
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# by vaxpops | 2016-12-30 08:45 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)
 ちつと早いが、年末の特別進行の丸太花道賞である。

 2016年の[いんちきばさら]通常更新は今回まで。

 年末年始は大坂から不定期に更新し、2017年の通常更新は東下以降…1月7日からの予定。
 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、別にこまりはしないだらうが、ご容赦賜はりたい。

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 それで今回は些か手前味噌なのを自覚しつつ

・南青山のナダールで開催された[展示バカ2016]のすべての出展者。

 に丸太花道賞を進呈する。

 またその展を實質的に主催されたS嬢に敬意を表し、特別賞を差し上げたい。
 手前味噌と云ふのは私も出展したからで、ちよいと躊躇ひを感じなくもないのだが、まあその辺のいい加減さも丸太花道賞なのだとご理解頂ければよいか。

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# by vaxpops | 2016-12-24 07:00 | 丸太花道賞 | Trackback | Comments(2)

冬の逆光

冬の午后の

光さかしまに

寂れたる名を

あはく飾る

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貴女の名に似て

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# by vaxpops | 2016-12-23 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

次の電車

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次の電車に乗りこんで

終着驛まで行かう

終着驛に着いたら

その次の電車に乗らう

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# by vaxpops | 2016-12-22 07:45 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

冬女子

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連れあふて

いづくに行くや

冬の女子





(まさか、牛丼?)

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# by vaxpops | 2016-12-21 07:45 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

赤い灯青い灯

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水面のネオン恋し

熱燗徳利を一本と

一皿のおでんをば

これ詰り冬の贅沢

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# by vaxpops | 2016-12-20 08:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

過程と結果の間

 過日、この[いんちきばさら]でお知らせした"展示バカ"が無事に終了した。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には厚く御礼申し上げます。

 終つて思ふのは出した寫眞が外の方のに較べてひどく暗く、また粗くなつてゐたことで

『終戰直後みたい』
『昭和な出來』
『昔のフヰルムのやう』

 とご感想を頂いた。ある程度は狙つてゐたことだから、そこはまあいいとして、予想を外れるくらゐの仕上りだつた、とはここで白状しておかねばならないか。

 詰り準備のミスである。予め幾つかのプリントで比較し撰択すれば、かうはならなかつた。手間を惜しんだとも云へますね。反省してゐます。
 併しその予想外はギャラリーの中で些か(惡)目立ちをしたかと感じられ、結果だけを見れば失敗ではなかつたとも思はれる。よかつた。

 そこで考へたのは寫眞は兎に角結果なのだなといふことで、仮に準備が完璧だつたとしても、プリントがそれを見るひとにとつて詰らないと感ぜられれば、それは失敗ではありませんか。

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 寫眞の面白み、樂しみは偶然だと云つたのは勿論私ではないのだが、またその言には同意するのだが、どうも寫眞の偶然は撮影の時だけではなささうで、そのことを實感出來たのがもしかすると最大の収穫だつたか知ら。豚肉と里芋の土佐煮をつまみながら(三つ葉がうまい具合に効果的)、さういふことを考へたのです。
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# by vaxpops | 2016-12-19 12:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

高い建物

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 十年余り前の冬の時期、三ヶ月計り沖縄市に居た。仕事に絡んでの話だから、甚だ詰らない事情だね。あの土地はさういふしがらみの無い体で行くものだよ。
 と書くのだから私は沖縄市に好意を感じたことになつて、それは正しい。お刺身の類には閉口したが、オリオン・ビールは旨いし、泡盛は廉に愉しめるし、沖縄そばやポーク玉子、種々のちやんぷるー、てびちーやみみがー。地の料理と酒精が合致してゐる点で、あんなに幸せな土地もない。

 併し、それだけか知ら。

 沖縄市を歩いて今もよく覚えてゐるのは、圧される感じがなかつたことで、那覇市では感じられたから、沖縄といふ土地全般に云へる特徴ではなささうに思はれる。
 そこで曖昧な記憶を辿ると気がつくのは空の高さであつた。だがそれを南國だからといふのは理由になりにくい。外の事情がある筈で改めて考へると、建物ではなかつたらうか。今ではどうだか判らないが、当時の沖縄市に背の高い建物は殆どなかつた。確か民家の屋根も低かつた印象があつて、そんなら本土風の大都市である那覇と異なつて感じても、自分の中で筋は通る。

 何故だらう。

 単純に考へると、高層の建築を用意する必要が無いのだらう。人口や経済の規模。或は軍隊の存在が重いこともあらうか。高い建物が林立すると、ジェット機やヘリコプターの飛行を妨げさうな気がする。ただそれだけで済ませるのは何となくちがふ気もされる。
 空は神さまのものである。と琉球人が信じてゐたか、どうか。ニライカナイを産んだかれらは海に生命と神秘を委ねてゐたと思はれるから、この推測はちよいとあやしい。そこはまあ認めるが、高いところに何かしらの特別な感覚を抱くのは土俗的には当然でもある。

 土俗的? 然り。

 古俗は文明の周辺に色濃く残る。とは私の独創でなくたれかの一文なのだが、事實(に少なくとも近しい)と思ふ。今の沖縄がさうだと云ふ積りではなく、併し琉球は長く文明の周辺であり續けた。そこに我われが意識の奥底に沈めて仕舞つた超越的な何ごとか、何ものかへの畏れが比較的浅い場所に残つてゐて、その意識が、心理的な制約…もつと云へば禁忌のやうになつてゐるのではないか知ら。
 勿論その制約乃至禁忌はごく不明瞭で漠然としてゐるにちがひないし、近代の沖縄人がそれを意識してゐるとも思へない。思へないが、どうにもさう感じられるのはこちらの贔屓目か。ビルディングに圧し潰されさうな町を歩きながら、きつと土俗の神さまはかういふ場所を好まないだらうなあと考へる。その時浮ぶのは日焼けし、健康的に肥つた、眉が濃くふとい、よく呑んでよく笑ふ南國美人の姿で、その明るさはそのまま記憶の中のあの空に似てゐる。
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# by vaxpops | 2016-12-18 16:00 | 画像一葉 | Trackback | Comments(0)

クリルタイ

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 上から順に生ハム(チーズ添へ)、大蒜の芽の肉巻き揚げ、鰤のお刺身。

 かういふ豪勢を満喫するのは当然、ニューナンブ≒マスケティアズのクリルタイであつて、この時期だから新酒が加はる。

 大笑ひと毒舌。
 眞面目な話題はあつたか知ら。

 まあそんなことはとうでもよく、兎にも角にもかうでなくちやあ、クリルタイではない。まつたくのところ、快い酒の夜なのであつた。
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# by vaxpops | 2016-12-17 13:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(5)