いんちきでさらにマクガフィン

by 丸太花道@乳軟部

うまい麦酒

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 十四歳のころに知合つたから、既に三十年を過ぎてゐる。友人の話である。かれは今、姫路から更に上つた土地にゐて、こちらは東都だから、滅多に会ふ機会を作れるわけではないが、年に一ぺんは会ふ。
 何をするといふことでなく、午后を漫然と歩いて、時に寫眞を撮り、それから呑む。但しお酒はほぼ登場しない。かれと私の間で共通するのは麦酒とヰスキィだから主にそちらであつて、そこで何か贅沢な銘柄を撰ぶわけでもない。
 互ひにひと付合ひが広いとは云へず、好むところは近しいから、さういふ点で話は大きに弾む。尤も近しいといつても、捉へ方や考へ方の立ち位置…多少の文學的な修辞が赦されるならば色彩…がちがふ。だから時に議論めいた場が出來る。
 「中學生のやうな」
青臭さだねえと顔を見合せ、苦笑ひを浮べたくもなるが、それは年ふりてといふ感慨(それとも感傷?)に近く、それ自体は避けるべきとも避けたいとも思はない。矢張り感傷だらうか。

 "ツールとコンテンツ"に対しての差違…おそらく理系と文系のロジカルのちがひ…、または重心の掛け方の異なり具合が實に愉快で、さういふ話題を肴にした麦酒が旨かつたのは云ふまでもない。
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# by vaxpops | 2017-01-05 09:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

長閑ナ春で御坐います

 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏に、謹んで新年のご挨拶を申し上げる。

 旧年はうまいお酒と肴と人びとに恵まれた。

 本年も更にすてきな酒肴に恵まれるだらう。

 そしてまた愉快な人びとに恵まれるだらう。

 讀者諸嬢諸氏よ、酉ノ年も相変りませず、賑々しいご贔屓を賜ります様、御願ひ奉ります。
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# by vaxpops | 2017-01-01 09:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

身も蓋もない年の瀬の

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 [しらんがな!!]つて胸を張られても、こつちもまた知らんがな。もしかすると姉妹店で[どないやねん!!]と[なんでやねん!!]があるのかと思つたが、どうやらさうでもないらしい。残念かどうかはまた別の話になるけれども。

 オーサカだねえ…『ダイ・ハード』冒頭でのブルース・ウィリスのやうにが呟きながら歩いてゐたら、参考になるのかならないのか判断に苦しむ献立看板があつた。

 うどんやそば、丼物の"色々"はさておき、おかずも"色々"で括つた揚げ句にシチューだけ(然も赤文字で!)飾つてゐて、どこに基準をおいてゐるんだらう。シチューが目立つのは"ハイカラやからね"といふ"エエ加減な理由"かも知れない。

 大坂は年の瀬に到つて変らず身も蓋もない。序でに底もないのだが、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には、さういふ些事に気を取られず、穏やかな年越しを迎へて頂きたい。
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# by vaxpops | 2016-12-31 09:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

或る夜の酒席

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 京橋といふまちは東都にもあるが、ここでいふのは大坂の方。東西の京橋に共通するのは地縁がうすいことだが、まあそつちはどうでもいい。
 西の京橋は酒場の乙女嬢の云はば庭で、だから足を伸ばしても安心出來る。お店の名前を挙げるのは控へるとして、實にうまい立ち呑みに案内してもらつた。
 それが画像の上段で、奥にあるのが突きだしなのかサーヴィスなのか、げその天麩羅。それから鮪の中おちとうで海老。他に食べたのは蛸のお刺身に玉子焼き、湯豆腐。麦酒、樽酒、濁り酒。

 場所を変へて、そこは酒場の乙女嬢いはく
『葡萄酒を呑ますお店』
の筈だつたが、最初に目に入つたのが何故か黒糖焼酎(泡盛もあつた)で、数奇者としては註文せざるを得ない。
 それに紅生姜の天麩羅。東都でもなくはないが、刻んだのを掻き揚げるのが殆どだから、一枚ものを目にして矢張り頼まない撰択はありえない。大皿に盛られた天麩羅がざつと焼き上げて出されたのはまつたく旨かつたが、うす仕立てのお出汁があればと(贅沢にも)思はれた。

 そこから天満に行つた。環状線で二驛だから、何といふこともない距離であるが、わざわざ移動したのはこちらの註文。以前に案内してもらつてうまいお店だつたから、再訪したいとのお願ひをしてゐたのだ。
 入るまでに一軒、立ち呑みなのだか角打ちなのだか判然としないところでお酒を一ぱい。ひどく混雑してゐたから、人気なのだらう。銘柄の揃へも中々宜しいものだつた。
 お目当てで食べたのは〆鯖に万願寺。画像にあるこの万願寺がまことに結構だつた。淡泊といへば淡泊、明瞭といへば明瞭な味はひで、この複雑な火の通し方は感心に値する。感心に値するといへば、かういふ旨い肴を出すお店を(何軒も)知つてゐる乙女嬢を先に挙げるべきか。まつたくのところ、いい気分で醉つぱらつた。
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# by vaxpops | 2016-12-30 19:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

サンドウィッチと罐麦酒

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 この場合はサンドウィッチを先にする方が正しい…のではないかと思ふ。この際だから"先にするべきだ"と云つておかうか。断定したところで、たれもこまらないだらうし。

 たれもこまらないだらうから、もうひとつ加へると、特急列車の乗客になるのなら罐麦酒は欠かすわけにはゆかないし、その時に最良となる組合せこそサンドウィッチではないか。八百屋お七に小姓の吉三、トリスタンとイゾルデのやうなもので、私は何を云ひたいんだらう。

 ところで特急列車内で罐麦酒にあはせるサンドウィッチは、一体何がいいのか知ら。

 ツナはうまいけれど、気分がありふれすぎるのが難点か。ローストビーフなんてのもあるが、逆に重々し過ぎる。海老なんぞをあしらつたサラド(風)だと手が汚れさうだ。何しろ特急列車に乗るのだ、さういふ気遣ひはしたくない。
 ハムカツではどうだらう。私はあの廉な食べものをこよなく愛するが、ちつと場違ひな気がされる。かといつてトンカツだと食事に近しくて、罐麦酒の気軽さが相殺されて仕舞ふ。どちらも旨いのに、残念だなあ。

 さうなると、トーストにハムとチーズ、胡瓜にレタス、うで玉子、トマト辺りで辛子入りマヨネィーズを用ゐるのが宜しからうかといふ結論になる。ありきたりで詰らないね。気を衒つてあはないよりはよいとするか。
 そこまで考へると、英國式を気取りたくなつてきて、實践するとなると先づ罐麦酒の代りに紅茶が顔を出す。それにサンドウィッチもバタと胡瓜に塩…詰りキューカンバーになる。いや決して惡いものではないのは知つてゐるんだが、あれは矢張りトランプを繰りながらつままないと、様にならない。
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# by vaxpops | 2016-12-30 08:45 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)
 ちつと早いが、年末の特別進行の丸太花道賞である。

 2016年の[いんちきばさら]通常更新は今回まで。

 年末年始は大坂から不定期に更新し、2017年の通常更新は東下以降…1月7日からの予定。
 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、別にこまりはしないだらうが、ご容赦賜はりたい。

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 それで今回は些か手前味噌なのを自覚しつつ

・南青山のナダールで開催された[展示バカ2016]のすべての出展者。

 に丸太花道賞を進呈する。

 またその展を實質的に主催されたS嬢に敬意を表し、特別賞を差し上げたい。
 手前味噌と云ふのは私も出展したからで、ちよいと躊躇ひを感じなくもないのだが、まあその辺のいい加減さも丸太花道賞なのだとご理解頂ければよいか。

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# by vaxpops | 2016-12-24 07:00 | 丸太花道賞 | Trackback | Comments(2)

冬の逆光

冬の午后の

光さかしまに

寂れたる名を

あはく飾る

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貴女の名に似て

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# by vaxpops | 2016-12-23 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

次の電車

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次の電車に乗りこんで

終着驛まで行かう

終着驛に着いたら

その次の電車に乗らう

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# by vaxpops | 2016-12-22 07:45 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

冬女子

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連れあふて

いづくに行くや

冬の女子





(まさか、牛丼?)

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# by vaxpops | 2016-12-21 07:45 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

赤い灯青い灯

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水面のネオン恋し

熱燗徳利を一本と

一皿のおでんをば

これ詰り冬の贅沢

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# by vaxpops | 2016-12-20 08:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

過程と結果の間

 過日、この[いんちきばさら]でお知らせした"展示バカ"が無事に終了した。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏には厚く御礼申し上げます。

 終つて思ふのは出した寫眞が外の方のに較べてひどく暗く、また粗くなつてゐたことで

『終戰直後みたい』
『昭和な出來』
『昔のフヰルムのやう』

 とご感想を頂いた。ある程度は狙つてゐたことだから、そこはまあいいとして、予想を外れるくらゐの仕上りだつた、とはここで白状しておかねばならないか。

 詰り準備のミスである。予め幾つかのプリントで比較し撰択すれば、かうはならなかつた。手間を惜しんだとも云へますね。反省してゐます。
 併しその予想外はギャラリーの中で些か(惡)目立ちをしたかと感じられ、結果だけを見れば失敗ではなかつたとも思はれる。よかつた。

 そこで考へたのは寫眞は兎に角結果なのだなといふことで、仮に準備が完璧だつたとしても、プリントがそれを見るひとにとつて詰らないと感ぜられれば、それは失敗ではありませんか。

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 寫眞の面白み、樂しみは偶然だと云つたのは勿論私ではないのだが、またその言には同意するのだが、どうも寫眞の偶然は撮影の時だけではなささうで、そのことを實感出來たのがもしかすると最大の収穫だつたか知ら。豚肉と里芋の土佐煮をつまみながら(三つ葉がうまい具合に効果的)、さういふことを考へたのです。
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# by vaxpops | 2016-12-19 12:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

高い建物

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 十年余り前の冬の時期、三ヶ月計り沖縄市に居た。仕事に絡んでの話だから、甚だ詰らない事情だね。あの土地はさういふしがらみの無い体で行くものだよ。
 と書くのだから私は沖縄市に好意を感じたことになつて、それは正しい。お刺身の類には閉口したが、オリオン・ビールは旨いし、泡盛は廉に愉しめるし、沖縄そばやポーク玉子、種々のちやんぷるー、てびちーやみみがー。地の料理と酒精が合致してゐる点で、あんなに幸せな土地もない。

 併し、それだけか知ら。

 沖縄市を歩いて今もよく覚えてゐるのは、圧される感じがなかつたことで、那覇市では感じられたから、沖縄といふ土地全般に云へる特徴ではなささうに思はれる。
 そこで曖昧な記憶を辿ると気がつくのは空の高さであつた。だがそれを南國だからといふのは理由になりにくい。外の事情がある筈で改めて考へると、建物ではなかつたらうか。今ではどうだか判らないが、当時の沖縄市に背の高い建物は殆どなかつた。確か民家の屋根も低かつた印象があつて、そんなら本土風の大都市である那覇と異なつて感じても、自分の中で筋は通る。

 何故だらう。

 単純に考へると、高層の建築を用意する必要が無いのだらう。人口や経済の規模。或は軍隊の存在が重いこともあらうか。高い建物が林立すると、ジェット機やヘリコプターの飛行を妨げさうな気がする。ただそれだけで済ませるのは何となくちがふ気もされる。
 空は神さまのものである。と琉球人が信じてゐたか、どうか。ニライカナイを産んだかれらは海に生命と神秘を委ねてゐたと思はれるから、この推測はちよいとあやしい。そこはまあ認めるが、高いところに何かしらの特別な感覚を抱くのは土俗的には当然でもある。

 土俗的? 然り。

 古俗は文明の周辺に色濃く残る。とは私の独創でなくたれかの一文なのだが、事實(に少なくとも近しい)と思ふ。今の沖縄がさうだと云ふ積りではなく、併し琉球は長く文明の周辺であり續けた。そこに我われが意識の奥底に沈めて仕舞つた超越的な何ごとか、何ものかへの畏れが比較的浅い場所に残つてゐて、その意識が、心理的な制約…もつと云へば禁忌のやうになつてゐるのではないか知ら。
 勿論その制約乃至禁忌はごく不明瞭で漠然としてゐるにちがひないし、近代の沖縄人がそれを意識してゐるとも思へない。思へないが、どうにもさう感じられるのはこちらの贔屓目か。ビルディングに圧し潰されさうな町を歩きながら、きつと土俗の神さまはかういふ場所を好まないだらうなあと考へる。その時浮ぶのは日焼けし、健康的に肥つた、眉が濃くふとい、よく呑んでよく笑ふ南國美人の姿で、その明るさはそのまま記憶の中のあの空に似てゐる。
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# by vaxpops | 2016-12-18 16:00 | 画像一葉 | Trackback | Comments(0)

クリルタイ

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 上から順に生ハム(チーズ添へ)、大蒜の芽の肉巻き揚げ、鰤のお刺身。

 かういふ豪勢を満喫するのは当然、ニューナンブ≒マスケティアズのクリルタイであつて、この時期だから新酒が加はる。

 大笑ひと毒舌。
 眞面目な話題はあつたか知ら。

 まあそんなことはとうでもよく、兎にも角にもかうでなくちやあ、クリルタイではない。まつたくのところ、快い酒の夜なのであつた。
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# by vaxpops | 2016-12-17 13:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(5)

再掲

 いつかどこかで書いたもの。

 どこにも残つてゐないけれど、記憶の中から再掲する。




煙草を、と彼女は云ふ。

僕はキャメルを差し出す。

火を点けてと彼女は云ふ。

僕はジッポを取り出す。

火がともる。

しづかに立ちのぼる、煙。




 語感は惡いし、言葉は調つてゐないし、全体にどうにもぼんやりしてゐるが、書いた時の気分が今も残り香のやうにあつて、推敲する気になれない。

 尤も記憶からの再掲でもあるから、元の形とは少し、異なつてゐるかも知れないけれど。

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# by vaxpops | 2016-12-16 07:45 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

眞贋

 ニューズを聞いて…私はテレビジョンを観ないのです…ゐると時々、誰々の未發見の原稿だとか草稿だとか書簡だとか、或は樂譜や下絵が見つかつたといふ話題が入つてくることがあります。美術館や博物館、資料館の館長だつたり主任研究員だつたりが

 『空白の時期を埋める貴重な資料』
 『弟子を思ふ誰々の人柄が解る』

なんてコメントを出すのを聞いた(或は観た)ひともゐるでせう。何となくいい気分になるね、ああいふのは。自分には丸で関係ないのに。

 そこで気になるのは發表の前で、原稿乃至樂譜乃至下絵が本ものかどうか、当然判定をしなくてはならない。あれはどんな風に行はれてゐるのか知ら。きつと筆跡や紙の時代や既に明かな事蹟との照合や、そんなものを綜合的に判断するのだらうが、もの凄くたいへんだらうと想像は出來る。当人のことだけでなく、周辺の事どもまで知悉しなくちやあならないんだもの。

 たとへば絵画で贋ものをつくる連中だつて工夫を凝らす。額縁だの絵具だの紙だのを眞作と同時代のを探し撰ぶさうだから(断つておきますが、私の知人に贋作作りがゐるわけではありませんよ。ゐたら話を聞いてみたいとは思ふけれど)、熱意がこもつてゐるよ。感心するところではないかも知れないが、方向は兎も角、熱の熱さは認めざるを得ない。

 併し草稿でも樂譜でも絵画でも、實物があるからこそ眞贋の判定が出來るとも云へる。これが現代風に電子的な形式で遺されてゐたら、どうなるのだらう。死後、フロッピー・ディスクから未發表の原稿が見つかつた安部公房といふ例は思ひ出せるとして、あれは例外だよなあとも思ふ。

 ただそれはプロフェッショナルだから例外に思はれるわけで、この[いんちきばさら]はパーソナル・コンピュータまたはスマートフォンで稿を作り、サイトで直接アップロードかメールで送信かである。紙の媒体を経てゐない。では今後、丸太の偽者が登場したら、眞贋をどう判定するのでせうね。そんな心配をする暇があるなら、贋作を何とかしたいと思はせるくらゐの一文を草するのが先なのは、よく判つてゐるけれども。
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# by vaxpops | 2016-12-15 08:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)

川縁り

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水をながめ

友とふたり

盃をば乾す

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# by vaxpops | 2016-12-14 07:30 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

魅惑の漢字

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献立に漢字がずらりと並ぶ様は、絵巻ものの勇将名将が勢揃ひする場面を連想させる。

花やかで豪壮、昂奮を禁じえないとはこんな時に用ゐるのがきつと正しいのだらう。



ん?



エッグ…?

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# by vaxpops | 2016-12-13 08:00 | 画像一葉 | Trackback | Comments(6)

搾る?

 半ば冗談の筈だが、一ぺんその(半)冗談にはつきり態度を示しておかねばならぬ。それは

『唐揚げに檸檬をいきなり搾る』

行為についてで、私はそれを端的に

『それは、ない』

と否定する。ないと思ふとか、ないのではないだらうかといふ婉曲な云ひ方ではなく、きつぱりとないのである。とんかつでもコロッケでも鯵フライでも、いきなりソース(乃至醤油または味つけぽん酢)をかけるべきではないのと事情は同じい。

 何故か?

 揚げものの揚げたてはそのまま食べるのが一ばん旨いからに決つてゐるからですよ、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏。外に理由があるものか。

 併しここで私は原始的なレトリックを用ゐてゐて、さて何でせう…と勿体振るのは趣味ではないから種を割ると、"いきなり"がその部分で、要するに"唐揚げと檸檬の組合せそのもの"を否定してゐるのではない。狡いと云ふ勿れ。

 唐揚げの揚げたてはそのまま齧るのが一ばんうまい。火傷の危機を麦酒で防ぐとまたそれがうまくつて、これ計りはお酒でも葡萄酒でも焼酎でも泡盛でもヰスキィでも無理な快感である。適材適所といふ言葉はこんな時に使ふのだらうな。

 ただ残念なことに、揚げたての唐揚げはいづれ揚げたてでなくなる。これは時間と物理が證明する世界の眞實なのであつて、人智の及ぶところではない。だがそれでもそこに唐揚げはある。我らは如何に振舞ふべきなのであらうか。

 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、檸檬を手にするのはまさにこの瞬間なのである。枯れた畑に降り注ぐ慈雨のやうに檸檬を搾るのは、まさにこの瞬間なのである。…いや待ち玉へ、唐揚げに直かに搾つてはならないよ。

 小皿を一枚。まづそこに用意するのは塩で、そこに檸檬を搾るのだ。檸檬塩で唐揚げをやつつけて、なほ残つてゐれば少量の醤油を入れ、更に檸檬を搾り込む。詰り檸檬だけを搾るのは避けるべきであつて、あの果實は思つてゐるより濃厚な味を持つてゐんである。

 ここまで書けばお判り頂けるだらうが、私は檸檬を全否定はしない。但し用ゐるにあたつては十分以上の注意を欠かすわけにゆかないし、そもそも檸檬を用ゐる必要が生じる前に、唐揚げは食べ尽くされて然るべきなのである。
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# by vaxpops | 2016-12-12 07:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

朧の如き昆布なり

 月見饂飩乃至蕎麦といふのがありますな。好物である。饂飩も蕎麦も玉子も好物なのだもの、月見饂飩乃至蕎麦を厭ふ理由がない。ことに寒い季節に出されると何だか嬉しいもので、中秋の名月を連想するのだらうか。
 余談ひとつ。チユウシユウは中秋とも仲秋とも書きますが、これは意味がちがふ。前者は旧暦の八月十五日…來年の新暦でいへば十月四日ださうな…、後者は旧暦八月…旧暦の秋は七八九の三ヶ月でその真ん中の意…を指すさうで、ややこしいね、これは。
 余談はこれくらゐにして、月と秋(と紅葉も?)は我らがご先祖の愛した風景で、それを俗に崩した工夫はたれの發明だらう。玉子をぽんと割り入れるだけなら、その辺の小父さん小母さんでも思ひつけさうだが、それを月見と見立てたのは風雅な名づけである。尤もその辺の小父さん小母さんだつて、和歌のちよつとした心得くらゐ持つてゐたのが江戸期の都市だから、莫迦にしてはいけないだらうな。

 どうしてこんな話を始めたかといへば、月見(と略しますが)には本來とろろ昆布が必要なのだといふ説を思ひ出したからで、玉子にひと刷け、被せるのださうな。これが月を隠す朧の雲なのは改めるまでもないでせう。月見なのだから月を見せたいところを、おぼろに隠すところが如何にも奥床しいね、秘してこそ花か。
 とここまで書いて思ふのは、もう何年もとろろ昆布を食べてゐないなあと気がついたからで、詰り幼かつた、または少年だつた私にとつて、あれは比較的にせよ馴染みのある食べものだつた。祖母が作つてくれた俵のおにぎりに一枚のとろろ昆布、旨かつたなあ。土曜日の午后だつたと記憶してゐる。一体に孫にあまくて、ただの一ぺんも叱られたことがないのだが、この話はしだらなく續くので留めませう。何年か経てば会ひにゆける。

 昆布をかためて削るといふ發想はどこから出てきたのか。元はどうも蝦夷から堺への輸送時に出來た黴の部分を使はない工夫だつたさうだが、当り前に考へると、その部分以外を切り落とす方が樂ではないだらうか。
 そこで連想されるのは削節である。腐敗を嫌つて干し堅め、それを削る工夫は鰹かどうかは別として干し魚に淵源があるだらうとは想像が容易だと思はれるし、さういふ前例があれば応用は出來るだらう。兄妹とまではゆかなくても、親戚くらゐにはなりさうな気がする。かういふ方式で作られる食べものは外の國にもあるのか知ら。たとへば中華料理にはわざわざ干してから、水またはお湯で戻して、煮て焼いて揚げてなどと凝る気配が濃厚だが、そこには"せざるを得ない"といふ切迫した感じはしないね。かれらの食事はあくまでも豪壮で、料る感覚がどうもちがふのではないか。

 中華料理の花やかさはそれと愛でまた羨めばよいとして、とろろ昆布の地味さ加減だつて捨て難い。東都では見掛けないのはおぼろといふ饂飩にとろろ昆布を乗せたもので、まことにしみじみとした一ぱいなのだが、江戸流の粋から見るとその地味具合が辛気くさく感ぜられるのだらうな。とは云へごく淡くちのお出汁にちよつぴりの醤油、そこに一枚のとろろ昆布を加へるとお吸物の完成で、これを料理と呼んでいいのかどうか。そこは大きに疑問ではあるけれど、少し重め宿醉ひの朝にお味噌汁すら躊躇はれても、これならまあ何とかなる。饂飩も蕎麦も抜いて玉子をあはせれば、中秋でなくても月見を愉しめる。
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# by vaxpops | 2016-12-11 07:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

きつと大眞面目

 ほら、色々とお客に知らせたくつて、寫眞やらキャッチ・フレイズやらを継ぎ足す内に、何が何やら解らなくなつて仕舞つたお店、偶に見かけるでせう。

 店主はきつと大眞面目の生眞面目だつた筈で、大眞面目の生眞面目が混沌に繋がつたのだな、きつと。

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 天地創造のときの神さまに似てゐる。

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# by vaxpops | 2016-12-10 08:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(2)

何ヲ快トスルカ

 "何々の開き"と聞くと、どうも昂奮を禁じ得ない。皮が焦げる匂ひ、脂がはぜる匂ひに鼻孔を擽られる感じがする。当り前の焼き魚でもさういふ誘惑はあるが、開きほどの強さはないのではないかと、いや比較したことがないから、その辺は曖昧にするけれども。

 画像は過日、久しぶりの友人と呑んだ席で註文した秋刀魚の開き。本当はただの塩焼を食べたかつたのだが、仕立てられるのがなくつて

「開きなら、ありますよう」

といふ事情でかうなつた。些か残念に思つたのは正直なところで、併し食べてみるとこれが当り前の塩焼とは異なる美味さだつたから驚いた。

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 頭も目玉も骨も砕き食べ切つたのは云ふまでもないとして、同席の彼女は猫舌だから、その分を予め取り分けなくてはならなかつた。かういふのを愉快と思へるかどうかは、酒席の愉快と殆ど一直線に結びついてゐるのではないかとも思はれる。
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# by vaxpops | 2016-12-09 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

どうにも納得し難くて

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何がどうとは云へないけれども、何かどこかが間違つてゐる風にも思はれる。

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# by vaxpops | 2016-12-08 07:45 | 画像一葉 | Trackback | Comments(0)

堅く信じる

 立ち喰ひ蕎麦屋の出汁の匂ひはまつたく迷惑なもので、幾度うつかりさせられたことか。それで大体のところ、外れと感じない…但し厳密な蕎麦好きには受け容れられないだらう…のだから、もつてそれを大したものだと云はざるを得ない。
 併しその立ち喰ひ蕎麦屋でも出すお店が限られるのがカレー饂飩で、確かにあれは蕎麦つゆと異なる文脈の準備が必要になるから、常に用意出來るのは一部だらうと思ふ。残念だなあと云ひたくもなるが、これはカレー好き饂飩好きの我が儘と考へてもらつてかまひません。

 一体に私がカレーを偏愛するのは我が親愛なる讀者諸嬢諸氏によくご存知でせう。カレーの懐の深さについては以前から何度となく触れてゐるからここでは繰り返さないとして、その組合せで最も奇跡的と私が堅く信じるのがカレー饂飩なのだ。
 考へてもみ玉へ。本來食べものである筈のカレーを"美味しく呑む"のにこれ以上相応しい形はないのではないか。いや本気なのだよ、私は。
 それでかういふ場合の饂飩は、東京風の方が旨い。饂飩それだけで云へば、昆布でお出汁を取つた大坂風が美味い…口に適ふとして、カレーといふきつい味を受け止めるなら、東都式の削り節と醤油で仕立てた、骨のふといおつゆでなくては、対抗が厳しさうに思はれる。たとへば画像のたぬき饂飩のやうな。

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 それともうひとつ。

 カレー饂飩には刻み揚げを断じて欠かしてはならない。あれこそが他にはない独特の旨さを醸し出す重要で決定的な要因だと私は堅く信じて疑はない者なのである。

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# by vaxpops | 2016-12-07 07:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

開幕!

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【宣伝】展示バカ2016【來れ】
■場所:南青山・ナダール ⇒ 場所はこちら (ページ下段に地図が記載されてゐます)
■開期:12/6~12/18
■時間:12:00~19:00(最終日は16:00まで/月曜休廊)

ニューナンブ≒マスケティアズから"アラミス"頴娃君ことAnzyと"ポルトス"丸太こと私が参加するグループ展です。
御用とお急ぎでない方は勿論、御用とお急ぎの皆みな様方も青山に都合を作つてお越し下さいまし。
ギャラリーには時間の許す限り参る積りですが、事前にコメントなど頂戴出來ましたら幸ひです。
我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、南青山で御目文字賜はれることを樂しみにさして頂きます。

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# by vaxpops | 2016-12-06 18:45 | ニューナンブ | Trackback | Comments(0)

箱庭的伝統

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 "ちよい呑み"と称して出されたのは五勺の小さな徳利。[手取川]が美味しいのは、今さらいふまでもない話でせう。
 感心したのはごく小さなお盆に徳利と猪口が乗せられてゐたことで、気分が宜しい。理想を云へばほんの少し、塩辛でもあれば完璧であつたが、これはまあ贅沢と云ふものか。

 それで気になるのは何故お盆に感心したかの方なのだが、おそらくそれは
『ひとつのまつたき小宇宙』
を暗示してゐる風に思はれたからではないか。かういふ場合、大ぶりの徳利にぐい呑みでは不似合ひで、これもまた日本的な箱庭好みの伝統と云へなくもない。
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# by vaxpops | 2016-12-06 08:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

愉快な夜の

 馴染んだひとと逢ふのは気分が宜しい。

 それが二年振りくらゐのお久しぶりであればなほのことで、かういふ細くて長い…またはしぶとい付きあひが出來るのは年齢の功といふべきか。

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 上から順に付きだしのもつ煮、栃揚げの卵とぢ鍋仕立て(これが上々の出來)、それから秋刀魚のひらき。
 お久し振りにも関はらず、常と変らない莫迦話と麦酒、冷や酒を一本添へて。まつたく愉快な夜なのであつた。
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# by vaxpops | 2016-12-05 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

渋好み

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 上段。クリームチーズの酒盗和へ。
 下段。焙り牡蠣。

 かういふのが出てきた時に、目を爛々と輝かすひとは信頼に値する。

 と思はれるのだが、渋好みと云はれるだらうか。
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# by vaxpops | 2016-12-04 07:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

烏賊韮

 過日、毎日の行き帰りの途中にある小さなラウンジで呑んだ。仕事が妙にばたついた日で、かういふ夜に真つ直ぐ帰宅するのは性に合はない。尤もこんな時はさらつと呑むに留めるのが良策でもある。併し予定外はどんな場合でも考へられるもので、その晩も顔見知りのお客と莫迦話に花を咲かせることになつた。福岡のめしは旨いといふ大事な(そのくせちつとも具体的ではない)情報を得たり、最寄り驛ちかくの素麺屋が素麺だけでなく侮れないらしいと教えへてもらつたり、ボジョレーのヌーヴォ(惡くない出來だつた)をご馳走になつたりと、これだけならば中々有益と呼べる時間を過ごした。

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 それでラウンジのママさんと同席していた別のお客と三人連れで、更に呑みに行つたのは一体どんな流れだつたのか知ら。三人とも知つてゐるごく小さくて肴のうまい居酒屋である。
 そこで出されたお通しが画像の上段…烏賊と小芋を焚いた小鉢でこれがよい出來。やや濃いめで少し甘みが勝つてゐるかと思はれる味つけは東京風といふより、お酒との相性を考へた結果にちがひない。今どきの"日本酒は冷やで刺身をつまみにするのが恰好いいんだぜ"と思ふ向きにはきつと理解の外にある渋さ(併し終電車もなくなつた時間帯に、二十歳そこそこの女の子が独り…驚かされたね、まつたく…でゐたから、例外は認めるべきだらうな)で、熱燗を註文した私にすれば拍手したくなる組合せになつた。

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 下段は献立表に"ニラ"とだけ書かれてゐたから註文したら出てきた韮の卵とぢ。他にも韮で肴を作れるから"ニラ"だつた筈だが、遅い時間帯と酒精の影響は油断がならないもので、何が出來るか訊いたのに忘れて仕舞つた。酔ひながら撮つたから色々いい加減になのはご容赦頂くとして、真ん中辺りの白身がうまい具合の半熟なのは判つてもらへるのではないか。かういふ仕上げで出される韮卵に不味い道理はなく、これなら炊きたてのごはんにも適うふのは疑へない。尤もその晩は既に満腹だつたから、七味唐辛子をぱらばら振りつつ、熱燗を含むに留めたのであつた。
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# by vaxpops | 2016-12-03 08:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)
 いや實はうつかりして、これを出すのを忘れてゐたのである。まつたく何をしてゐるのだろう、私は。併し孔子さまも過チヲ糺スニと仰有つてをられる。ええ、その辺はアレといふことで、ここは、ひとつ。

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 何かと云へば画像の[北光正宗]の話で、これは先達ての宿醉ひ紀行での大当りであつた。

 "しぼりたて生原酒"と書かれてゐて、如何にもずしりとくる印象があつて、正直なところ濃厚で重めのお酒とは相性が宜しくない。まづいと感じるのではなく、こちらの体調と余程うまく適はないと、美味さを存分に堪能出來ないんである。

 それで含んでみると、骨組みが頑丈なのに口当りや喉越しがやはらかくて驚いた。生酒にありがちな厭み…少量しか用意出來ない分、癖を必要以上に強調するやうな…が感ぜられず、ごくニュートラルな醸り方だつたのではないか。お酒でも葡萄酒でも、踏み止まるのは勇気が必要なのだな。

 かういふ銘柄を嗅ぎつけた頴娃君は大したものである。が、それより凄いのはこれを仕入れ、なほかつ頴娃君に奨めた松本驛近くの某酒屋の女将さんではないかと思はれる。地味にも感じる穏やかな北の光をそのままに壜詰めしたやうなお酒であつた。
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# by vaxpops | 2016-12-02 07:45 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)
 許可した覚えがないのに師走となつて仕舞つた。あんまり気にすると、老人への道を全力疾走する破目になりさうだから、さういふのは横に措いて續けるのが丸太花道賞である。

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 例年11月はばたばたする。ニューナンブ≒マスケティアズの旅行があるからで、今回の模様はリアルタイム更新とその後の"信州"タグでご覧頂いたとほり。それに[展示バカ2016]の準備もあつて、神聖な労働はどうしたのだ、私。
 時事的な話題だと、ドナルド・トランプが次期米國大統領になつたり(本人はもしかして"やべエ"と思つてゐるかも知れない)、地味な鶴竜がいつの間にか幕の内で優勝してゐたり、ボジョレーの新酒解禁(惡いものではなかつた)があつた。東京では54年ぶりに初雪が観測…前季の初雪が1月だつたさうだから、今年2度目の"初雪"といふことになる…された。

 さういふ中で今回の丸太花道賞は撰考が中々六づかしかつた。それだけ候補に足る人物事象が多かつたからで、悩みつつ迷ひつつ

・11月19日にサントリー登美の丘ワイナリで試飲した岩垂原メルロ(2011年ヴィンテージ)

に丸太花道賞を進呈する。濃密で豊潤で複雑で要するに美味い。大聲では云へないが、登美の丘が胸を張る貴腐より好みに適ふ。一ぺん壜で存分に味はつてみたいのだが、何せ8,000円もするから、買ふ勇気を持てないでゐる。

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# by vaxpops | 2016-12-01 14:00 | 丸太花道賞 | Trackback | Comments(0)