いんちきでさらにマクガフィン

by 丸太花道@乳軟部

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閑雅にはあらず

 夏を題に取つた和歌で、暑いのが我慢ならないとか、水が温くて不愉快とか、さういふのは見当らないさうですね。絶無ではないにしても、風に揺れる水面が涼しさうとか、夜の虫の音が秋みたいだとか、そんなのが大半だといふ。これは

『暑いとかむしむしするとか、文句を云つたところで、暑くなくなつたり、からりとしたりする筈もないんだから、涼しさうな歌で、さういふ気分にならうぢやあないの』

詰り文學的冷房なのだ。といふ説は勿論私の頭に浮んなのでなく、確か丸谷才一の随筆に書かれてゐた。巧妙な見立てだなあ。せせこましいと云へばその通りだけど、閑雅に転じさせたのも、大した工夫である。

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 それで涼やかと云つたら、矢張り観月だらうと思つて、月見蕎麦を啜つた。さうしたら大汗をかいただけで、閑雅も何も、ただこまつた。

 冷しにするべきだつたか知ら。
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by vaxpops | 2017-07-12 07:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

路傍

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あぢさゐの

露を歓ぶ

とほりみち

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by vaxpops | 2017-06-26 07:30 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(0)

晝めしと云へば

 サラリーマンの晝めしと云へば、蕎麦と牛丼ではあるまいか。手早くて廉価、大外れを引く心配が少ないといふ以外にはつきりした根拠があるわけではないけれど、何だかそんな気がされる。

 或はラーメンや炒飯か。
 或は鶏の唐揚げ定食か。
 あとはカレーライスか。

 矢張り時間が掛からない、そこそこ廉価でまづい心配が少ないのは同じか。それにここまで挙げた六つで、晝めしはどうにかなりさうでもある。サラリーマンの経験は参考になるなあ。

 ただこちらの胃袋はそんなに大きくないから、唐揚げや脂だらけのラーメンは遠慮したい。まあ蕎麦や牛丼が似合ひの分量と思はれる。

 さて出された丼をがつしり握る。
 顔をうづめるやうな姿勢を取る。
 それから無言で素早く平らげる。

 何と云ふか、旨さうな食べ方ではないが、忙しいサラリーマンの晝めしは大体こんな感じではあるまいか。見習ひたくはないけれど。
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 蕎麦ならたぬきにする。七味唐辛子はぱらぱら程度。天かすと葱を絡めながら啜るのがうまい。巷間、蕎麦は喉で味はふと云はれるが、たぬきだけは例外で、がつしり噛み締めるのが望ましい。
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 牛丼はごくありきたりのやつ。肉を少しよけ、そこに紅生姜を。七味唐辛子は用ゐない。生卵を奢るなら、ごはんの中に流し入れる。混ぜないのが大切で、かうすると味が一色にならずに済む。

 尤も画像のはどちらも、晝めし時を過ぎた時間帯に食べてゐる。手早くて廉価で、そこそこに旨かつたけれど、これが連日續くのは、勘弁してもらひたくもある。
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by vaxpops | 2017-06-20 13:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

キツネソバ

 きつねそばといふ食べものがこの世に在ることを知つたのは、山下洋輔が書いた"ピアノ弾き"のどれかだつたと思ふ。海外ツアー中のトリオが日本食に餓ゑて
『薬罐一杯、キツネソバのつゆを飲みたい』
と呻く箇所があつて、当時の私は大坂の少年だつたから、ジャズマンは不思議なものを食べたがるのだなあと面白がつた。何せ大坂だもの、きつねといへば饂飩で、その頃の年寄りの一部は信太とも呼んでゐた。どうして信太なのかはご自身でお調べなさい。役に立たない知識がひとつ、身につくから。

 初めてきつねそばを啜つたのはいつだつたか。東に下つてからなのは確實だから、前世紀末か今世紀初頭なのはまちがひなく、眞冬の有樂町か新橋だつた筈だ。立ち喰ひなのは勿論である。それも外の風が吹き込んでくる、しよぼくれた、古典的或は伝統的な立ち喰ひで、思ひ返すときつねそばの初体験に最高だつたね。
 東京風の鰹節と醤油の効いた濃いお出汁も、からくて薄くて堅いお揚げ…きつねうどんのそれはあまく厚く、あくまでも軟らかい…も、足元をくぐり抜ける寒風も、骨の芯が冷えるのに耐へかねてたつぷり振りかけた七味唐辛子も、この場合はすべてよい作用をもたらしたのは冷静に考へるまでもなく、詰りそれ以來、ピアノ弾きが書くところのキツネソバに私は好感を抱いてゐるのだな。

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 尤も抱く好感の量の割りに、きつねそばを啜る機会は多くない。食事とするには貧弱だし、おやつと扱ふには労働の気分が濃い。漠然と平日の午后、何の気なしに立ち喰ひ蕎麦屋の暖簾をくぐるのがよささうにも思はれるのだが、その漫然の午后を得るのが六づかしい。外國で何週間か過ごせば、漠然も漫然もなく、啜りこむ機会は出來さうだが、それぢやあ割高にもほどがある。
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by vaxpops | 2017-01-15 07:30 | 飲食百景 | Trackback | Comments(0)

堅く信じる

 立ち喰ひ蕎麦屋の出汁の匂ひはまつたく迷惑なもので、幾度うつかりさせられたことか。それで大体のところ、外れと感じない…但し厳密な蕎麦好きには受け容れられないだらう…のだから、もつてそれを大したものだと云はざるを得ない。
 併しその立ち喰ひ蕎麦屋でも出すお店が限られるのがカレー饂飩で、確かにあれは蕎麦つゆと異なる文脈の準備が必要になるから、常に用意出來るのは一部だらうと思ふ。残念だなあと云ひたくもなるが、これはカレー好き饂飩好きの我が儘と考へてもらつてかまひません。

 一体に私がカレーを偏愛するのは我が親愛なる讀者諸嬢諸氏によくご存知でせう。カレーの懐の深さについては以前から何度となく触れてゐるからここでは繰り返さないとして、その組合せで最も奇跡的と私が堅く信じるのがカレー饂飩なのだ。
 考へてもみ玉へ。本來食べものである筈のカレーを"美味しく呑む"のにこれ以上相応しい形はないのではないか。いや本気なのだよ、私は。
 それでかういふ場合の饂飩は、東京風の方が旨い。饂飩それだけで云へば、昆布でお出汁を取つた大坂風が美味い…口に適ふとして、カレーといふきつい味を受け止めるなら、東都式の削り節と醤油で仕立てた、骨のふといおつゆでなくては、対抗が厳しさうに思はれる。たとへば画像のたぬき饂飩のやうな。

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 それともうひとつ。

 カレー饂飩には刻み揚げを断じて欠かしてはならない。あれこそが他にはない独特の旨さを醸し出す重要で決定的な要因だと私は堅く信じて疑はない者なのである。

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by vaxpops | 2016-12-07 07:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

ドラム罐なら大丈夫

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犬も猫も山羊も獅子も。

ひと安心で一ぱい。

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by vaxpops | 2016-10-31 08:00 | 画像一葉 | Trackback | Comments(2)

うつかり

 うつかりといふのは油断がならないもので、何しろどこでうつかりするか解らない。どんなうつかりを仕出かすかも予測出來るものでなく、そもそもさういふことが事前に明らかならうつかりせずに済むか。

 蕎麦を啜らうとは決めてゐたのである。迷つたのはきつねかたぬきかで、これはいつだつて悩ましい。饂飩だと私が食べるのは基本的に大坂式だから、きつね一本(たぬき饂飩は大坂式にないんである)で問題は起らない。
 さう云へば、東都のきつねうどんで感心した記憶がないのに気がついた。初めて食べた時、油揚げ…大坂風に云へばお揚げサン…が薄つぺらな上にひどく堅いのに一驚を喫し、饂飩とは適はないなあと思つたのは覚えてゐる。但しその薄つぺらで堅い油揚げが、東京風の蕎麦に入るとうまいものに感じられて、かうなるとそれぞれの組合せの相違と考へる他になささうだ。

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 それで思ひ出すのはたぬき蕎麦を初めて啜り込んだのは東都の立ち喰ひ蕎麦だつた。
(なんだ中々、いけるではないか)
と何故だかえらさうに考へたのは、若僧の生意気と笑つてもらひたい。
 我われ大坂人はたぬきの具を"天かす"と呼んで些か下に見る傾向がある…ちよつとした饂飩屋なら無料の天かすがあるのも珍しくない…のだが、實際は"かす"でなく、わざわざ用意した揚げ玉が入つてゐて、口当りといふか舌触りといふかが滑らかな感じに好感を抱いたのだと思ふ。尤も後になつて、本当の天かす(お店で揚げた天麩羅の欠片)を使つたたぬき蕎麦を喰つて、その旨さにびつくりしたのだが。

 詰りきつねにもたぬきにも啜りたくなる動機があつた、あるわけで、その積りだつた筈の私が坐つた途端
「天麩羅蕎麦を、ひとつ」
と口走つたのはどんな事情の顕れか。
 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、これがうつかりなのである。ひよつとすると狐と狸の化かしあひ合戰のとばつちりが、かき揚げになつたのだらうか。まつたく、うつかりは油断がならない。
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by vaxpops | 2016-10-17 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

なンのこたアない

 晝めしのタイミングがちよつとずれて仕舞つた或る日、やむ事を得ずラーメンを喰つた。何がなんでもラーメンといふ決意を秘めてでないのは我が親愛なる讀者諸嬢諸氏のご賢察のとほりで、他に撰べるお店がなかつただけの事情である。
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 併し意外とありきたりな醤油ラーメンに出会へる機会は少ないもので、思つたほど惡いものではなかつた。ことにこれ見よがしの焼き海苔と何故あるのか理解に苦しむ鳴門巻きが入つてゐない点は中々に喜ばしく思はれる。

 お値段430円。

 支那竹が驚くほどまづかつた…当てにならない記憶にある限り、あんなにまづいのは初めての経験だつた…事を除けば値段相応で、偶にはかういふ晝めしもまあ、構はないかと考へながら啜り込んだ。尤もこんな、"なンのこたアない、ただの醤油ラーメン"自体、今となつては珍奇かも知れないのだけれど。

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by vaxpops | 2016-10-03 06:45 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)

1979 油断がならぬ

 旧國鐵新宿から大久保はたつたひと驛だし、歩いても精々十分程度なのだが、町のつくりといふか空気といふか、雰囲気が丸で異なつてくる。よい惡いの話ではなくて、兎にも角にもちがふのだな。

 大坂で云ふと梅田から天満に動くと、何だかちがふなあと感じる筈で、それに似てゐなくもないだらうか。さう云へばあすこでお酒を存分に愉しんだ記憶がないのは、無念と嘆いても大袈裟ではないと思はれる。
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 大久保は路地だけで出來てゐるやうな町だが、その中でも地味な場所にだつて、えらく渋さうなお店がずつしり鎮坐してゐて、油断がならない。

 この手のお店はどこに住んでゐるか解らない、併し明らかにその辺から湧き出てゐるだらうと確信出來る小父さん小母さんで賑はつてゐるのが常だから、一ぺん試してみたいと思ひつつ、未だにその勇気を持てずにゐる。

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by vaxpops | 2016-08-17 07:00 | ニューナンブ | Trackback | Comments(4)

1952 東京せんべろ作戰

 我が親愛にして眞面目な讀者諸嬢諸氏は参考にしちやあいけませんよ。

 気がつけば財布にあるのは1,000円札1枚こつきりだとする。併し呑みたいとする。確實なのは罐麦酒や罐チューハイの類とお惣菜を買つて帰ることなのだが、どうも気が進まないとする。詰り何がなんでも呑み屋に入らざるを得ない心もちで、ただ普通のお店だと収めるのは六づかしいから、廉なお店を撰ぶ必要がある。

 用心すべき点はふたつ。
 最初に生麦酒は割高だから註文しないこと。
 次には突きだしを用意しないお店であること。

 さうさう。この際は1,000円で呑むのが目的だから、味に頓着してはならないとつけ加へてもいいだらうか。まづいお店には行くまでもないけれど、基準は普段より低めに設定しておかなくてはならないでせう。
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 さうなると撰べるのは串焼き系統のお店となるだらう。近所とおぼしき小父さん小母さんが集まつてゐる感じのところがよい。お小遣ひをたつぷり持つてゐるわけではなからうから、さういふ人びとが集まるお店は廉価にちがひない。
 おそらく酎ハイの類は300~400円くらゐ。串ものは100円から、一品ものは300円から。大体の値段はさうだらうとして、それで何を註文するのかに慎重さが要求される。

 まづ呑むのは酎ハイ。これが2杯で600円。これに串ものを4本加へれば綺麗に収まりさうだ。それとももつ煮に串を1本でも同じくらゐ。
 生麦酒は頼まないが、瓶麦酒が500円くらゐであればしめたもので、呑みものはそれにする。串もの2本と揚げものがひとつ(値段次第でもうひとつ)を註文するのもいいだらう。

 焼きまたは揚げる時間にもよるとして、1時間に満たない程度で席を立つことになるか。お財布の負担は少なくて済むが、こんなのは呑み助としてとても正統な態度ではない。尊敬する吉田健一いはく、酒好きは

 朝から呑み始めて
 お午を食べながら呑み
 夕暮れを眺めつつ呑み
 晩めしをつまみながら呑み

そのまま気がつけば朝になつてゐるのが理想ださうで、その気分はとてもよく解る。かれにもし、このせんべろ作戰を提示したら、どれくらゐ叱られるか知ら。
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by vaxpops | 2016-07-21 06:15 | 飲食百景 | Trackback | Comments(8)