いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

1790 ライカが慾しい!

 さう思ふ事が年に何度かある。
 今はその時期ではない。
 その時期にこんな事を書かうものなら、自滅するのは目に見えてゐる。
 然しライカが慾しいと思つたとして、ライカには色々な種類がある。なのでこの稿では
『私が慾しいライカは何か』
と云ふ点を少し掘り下げて、“私にとつての”ライカのイメーヂを纏めてみようと考へた。我が親愛なる讀者諸嬢諸氏の、ライカ・ファンには、異論も反論もあるだらうが、諦めて頂く他にない。

 思ふにライカは幾つかの世代に分けられる。
 Urと呼ばれる個人作。Nullと呼ばれる試作機。それからI型とスタンダード。ここまでは試行錯誤の第1世代で、未だライカは歴とした精密機械の坐を得てはゐなかつた。
 焦点合せと距離計を連動させたII型から、ライカの第2世代が始まる。このブレイクスルーをライツ社は
『オートフォーカス』
と自讚したさうだ。スローシャッターと1/1000秒シャッターが追加で組み込まれ、ここでライカは一応の完成に到る。
 ボディの成型にダイカストを本格的に採用したIIIcから、M3の一部をフィードバックさせたIIIgとそれらの派生機種までが第3世代で、これは第2世代の洗練の時代とも云つてよい。
 M3で激変したライカは第4世代に入る。M2、M4及びM5とその派生機種の時代で、おそらくライカと聞いて浮ぶのはここまでではなからうか。M4-2からM6及びその亞種とが第5世代。そして中継ぎのM7を経て、ライカはデジタルの世代を迎へる。

 さて。
 ここまで書いて気がついたのは、ライカフレックスとライカRを丸で無視してゐる点で、どうやら私は一眼レフをライカの範疇に含めてゐないらしい。それからM3以降のライカにも冷淡だね。こちらはライカだけれど、興味…“慾しい!”と云ふ気分の対象ではないのか知ら。意識は言葉に現れるものだ。
 そこで改めて考へると、“私にとつての”ライカは先づ、距離計連動式と同じいみたいだ。更に云ふと自動露光や露光計もどうだつてよいらしく、詰り“不便なカメラ”を総称して(私は)ライカだと思つてゐる…のではなからうか。有り体なところを云ふと、ライカを機械として見れば、どこもかしこも不完全で、妙に重いし(ライカを“軽量”と呼んでいいのは、シートフヰルム式カメラを主に用ゐたひとだけだ)、使ひ勝手も…とてもではないが…良好とは呼び難い。

 にも関はらず、ライカは時に私の物慾をいたく刺激する。

 ライツ社はライカの不便と不完全を大量のアクセサリでカヴァし續けた。たとへば巻き上げの不便をライカピストルで、たとへば近接撮影をNOOKYで、或はファインダの不便をVIDOMで。
 我われやマニヤは屡々その“造りのよさ”に見惚れて仕舞ふのだが、本來を考へると誤つた方策なのだ。膨大な種類のアクセサリはそのまま、本体が可能な範囲の狭さを示すものだから、ライツ社はアクセサリに注力する時間を本体の改良に費やすべきであつた。第4世代の最初、おそらくMバヨネット式のライカで一ばんお金を掛けただらうM3の登場は、その改良の證だつたけれど、如何せん遅すぎたと、今の私には思はれる。

 日本の寫眞機史を遡るとたいてい
『M3に匹敵するだけのレンジファインダー機は造れないと悟つた國内メーカーは、次々と一眼レフに舵を切つた』
と書かれてゐて、これは詰り“製品に出來さうな程度まで”一眼レフの技術が熟しつつあつた事を示す。カメラの構造を考へると、本來的にアクセサリを必要としない一眼レフの方が、使へる範囲の広さで優位なのは云ふまでもない。ライツ社はM3に追撃が来ない事を、自社の有利と見なしたのか。それともM3をじつくり検討して
『これあ、後継機を造るのは無理だ』
と頭を抱へたのか。両方だらうね、おそらく。でなければM3以外のMバヨネット式ライカがすべて、M2系統のファインダを採用した理由も、ライカフレックスの發表がM3から10年も遅れた事情も解らなくなる。

 とここまで書けば、我が賢明なる讀者諸嬢諸氏の事だ、ははあ詰り
『丸太が物慾を刺激されるのは、第3世代以前のライカなのだな』
さう考へられるだらう。その通りで、この時代のライカは一眼レフを意識する必要がなく、技術的に未熟でもあつたから、あのアクセサリ群にも、“必要”と云ふ説得力がある。
 第2世代と第3世代は、II型からIIIb、IIIc、更にIIIfを経てIIIg(本当のところはM3の変型と見立てたい)に到る大きなグループで、一部の例外…たとへば獨逸空軍や三連冠を除けば、(ライカにしては)廉価な入手も不可能ではない。品質はどうかと云はれたら苦しい面もあるが、何しろ60年以上昔のカメラである。そこを求めるのは酷な話でせう。機能の面を見れば、大体のところは同じと考へて差し支へないから、後は形の好みがどうかと云ふ点に尽きる。

 そこで真つ先に外れるのがIIIfとIIIgで、前者は巻き上げノブに組込まれたフヰルム感度の表示部が、後者はブライトフレイム用の採光窓が気に入らない。この世代群の中での完成度の高さは飛び抜けてゐるのは認めるとして、それが好もしく思へるかはまた別の話なのだ。遡つてIIIb以前の機種は流石に古すぎる。メンテナンスの問題はどの機種でも大したちがひはなからうが、レンズとのマッチングで苦心させられさうに思はれる。然しズマールやキセノンを附けたら、恰好いいだらうな。

 かう考へると、IIIcが面白さうだ。第2/第3世代では品質に最もばらつきの多い機種だが、それなりの数が出回つてゐる。序でに云へば、一部のマニヤに人気のある軍用モデルの多くはこの機種に集中してゐる。我われが目にする大半は偽物だけれど、さう云ふのを眺めてにやにやする厭な樂しみもあつて、まあそつちはお奨め出來かねる。焦らずに探せば、そこそこの程度の個体は見つかる筈だから、私が撰ぶとしたらこれになりさうな気がする。
 レンズは50㎜エルマーを基本としたいが、あのレンズはちよいと使ひ辛い。50㎜なら撰び放題なので、ライツ製に拘はらなければ、ニッコールやセレナー、初期のジュピター(ツァイスのコピーとして惡名高い)なんぞを候補に考へてよく、いづれもIIIcに不釣り合ひではない。うん。次にライカが慾しくなつたら、この辺りの組合せで考へてみるとしませう。
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by vaxpops | 2016-02-18 07:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(4)
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Commented by harurei at 2016-02-19 01:09
フィルム、そしてバルナック、しかもⅢc、それにジュピター・・・
もう手元にあるかのように固まってるー!
早くその時期がこないかな(^o^)
Commented by 輪音 at 2016-02-19 02:01 x
フォクトレンダー!
程度のよいⅢcが入手出来るといいですね。
個人的に一番均衡性のよいライカと愚考します。
先ずは檸檬社へ潜入捜査でしょうか?
Commented by vaxpops at 2016-02-20 20:22
はるれいさん。

 考へれば考へるほど、IIIcに落ち着いて仕舞ふのですね。諸々述べましたが、どうやら私はあの機種が好みらしい。

 後は財布の許可次第さね。
Commented by vaxpops at 2016-02-20 20:48
輪音さん。

 何ゆゑ最初にフォクトレンダーが??

 それは兎も角、IIIcはねぢマウント・ライカの中では可成りのばらつきが見られます。
 安定した品質を優先するならIIIf/gから撰ぶのが妥当と云ふか、さうなつて仕舞ひます。

 慌てて買ふべきカメラではありませんから、檸檬や地図やその他でも、ゆつくり調べてゆけばよいと思つてゐます。
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