いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

1850 まつたき円環

 さうしよつちゆう、食べるわけでもないのに、妙な熱意で語りたくなる食べもの、といふのが世の中にはあつて、目玉焼なんかはそのグループの中でも、可也りの上位を占めるのではないでせうか。何となく、そんな気がする。

 卵の料理が加はると、食卓が豪勢になつた感じがされて、嬉しいものだが、目玉焼も勿論例外ではなく、然しこれほど
『かうあつてもらひたい』
と激論になるひと皿も少なささうに思はれる。

 片面焼。

 黄身は半熟。

 塩胡椒は控へめに。

 醤油またはマヨネィーズで。

 以上が私の求める基本になる。
 但し麺麭にあはせる場合は、両面焼でも可としたい。ベイコン・エッグにするなら、薄切り細切れをかりかりになるまで焼いてもらはなくちやあなるまい。

 さういふ目玉焼をごはんにのつける。焼海苔で巻きながら食べる。卵かけごはんとは別種のうまさで、柴漬や壺漬なぞをあはせると、洋食なのか和食なのかよくわからなくなつて、そこがまたうまい。
 麺麭ならトマトやレタス、チーズをお供にするのが宜しからう。あんまり凝る必要はない。それでかぶりつくと、どうしたつて黄身(の一部)がお皿にこぼれる。こぼれた黄身を麺麭の端つこで掬ふのがまたうまい。

 品がよくない??
 確かにさうですが、一体私はさういふ上品とは呼び難い食べ方が好きなのだ。野菜炒めや鯖の味噌煮の残りに、ごはんをひと口、はふり込むも好きで、かう文字にすると貧しげだね、どうも。
 ここで些か居直ると、目玉焼はそこまで丁寧に品よく食べるものではないと思ふ。素早く用意して素早く食べてうまいので、こんな場合は容儀を調へるひまがない。

 ところである随筆家が、朝めしのおかずと晩酌の肴は
『食事の円環をおごそかに"形作るのが、あらほましい』
姿であると喝破してゐて、我らが目玉焼はさて、どうだらう。塩胡椒ならかるめのお酒に似合ひさうだが、あつといふ間になくなりさうで、肴としては些か頼りないか。その形状はまつたき円環なのだが、残念な気がされてならない。
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by vaxpops | 2016-04-13 12:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(4)
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Commented by 輪音 at 2016-04-15 23:51 x
ぐさりと刺して中身がとろりと溢れてくるのをやっつけるのがいいですね。
ふふふ。
Commented by vaxpops at 2016-04-16 13:32
輪音さん。

 ぐさりはいけません、ぐさりは。
 柔肌を扱ふやうな繊細さで臨みませう。
Commented by 輪音 at 2016-04-16 19:21 x
では、ほんの数滴ばかり北の國手作り醤油を垂らした農家直送の目玉半熟仕様を慎重且つ繊細に口元へ持ってゆき、その端を八重歯でやさしく噛みきって、中身を悲しく愛おしく啜り上げることにしませう。
Commented by vaxpops at 2016-04-16 19:37
輪音さん。

 さうでなくちやあ。

 ところで、筒井康隆的比喩は筒井康隆だから成り立つ危険きはまる藝ですね。
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