いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

常連ハイボール

 仕事場からの帰り道には危険が潜んでゐる。まづ仕事場の最寄驛に到るまでは時間にして数分程度なのだけれど、そこにうまい、またはうまさうなお店が何軒かある。そこを何とか我慢して目を瞑つて電車に乗る。驛に入つた時点で自分を褒めたくなるのはここだけの話。

 併しもつといけないのは自宅側の最寄驛近辺の方で、うまい呑み屋(但しお酒はそこまで感心出來る揃へではない)と葡萄酒のバー(残念ながらやや割高)があり、長の無沙汰ではあるが、少し離れたところにはハイボールとシガーを教へてもらへるバーもある。仮に順を追ふとしたら、葡萄酒バーで食前酒、呑み屋をメインディッシュにしてシガーバーで〆る流れになるだらうが、幸ひなのはそれぞれのお店に距離があることで、酔つ払つた身で實現さすのは六づかしいだらう。

 そこを何とか我慢して歩き出せたとして、更にもう一軒、そこはラウンジなのだが、さういふ難関が残る。ここはもう呑むだけ…但しうまさうな肴はメニュにある。試してみなくちやあ…なのだが、ぼつたくるやうな値段ではない(寧ろ賑やかに呑める時間からすると廉いかも知れない)し、ママさんの客あしらひも中々巧いので、どうかすると立ち寄つて仕舞ふ。どうかするとといふのは呑み助の行動としてたちが惡い。
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 そのラウンジで呑むのはハイボールと決めてゐて、いやそんなに恰好よいものではないか。角瓶のソーダ割りと呼ぶ方がしつくりする。偶さか一緒になつたお客(勿論殆どが初対面)と当り障りのない話をし、ママさんに揶揄はれ、時にマイクを持つのは惡くないもので、我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、これが小父さんといふ生き物なのだ。
 ものの弾みで立ち寄つたのが縁になつて、何回か足を運んでゐるうちにどうもママさんは私を覚え、覚えついでに私がいつもハイボール…ではなかつた、角瓶のソーダ割りを註文するのも覚えたらしく、先日椅子に坐ると、何を呑むではなく
「いつものでいい?」
と確認を取つてきた。ああこれが常連と呼ばれるひとの立場なのかなと思つて、頷きながらくすぐつたい気分になつた。
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by vaxpops | 2016-09-08 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)
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Commented by ダルタニャン at 2016-09-08 07:39 x
清張ミステリーの一節を思い出します。以下引用。「国電蒲田駅の近くの横丁だった。間口の狭いトリスバーが一軒、窓に灯を映していた」。「ハイボールにしよう」。そう答えた白髪まじりの男の言葉に「東京弁でないアクセントがあった」。これが事件へのプロローグ。。。
Commented by vaxpops at 2016-09-08 20:38
"ダルタニアン"G君。

 その國電蒲田驛近くの横丁にあるトリスバーつて、きつとモデルがあるにちがひありませんね。今でも地味に営業してゐるのか知ら、と気になります。

 尤も私、松本清張は讀んだことがないのですが。
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