いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

時間の問題

 最近何故だか動画の投稿ではきはめて有名な某Webサイトで、デッド・オア・アライヴといふバンドの曲を聴いたんです。ゲームではないよ。ええ、ディスコが全盛のあの時代の歌。近ごろの若エ連中はディスコもストック・エイトキン・アンド・ウォーターマンも知らないだらう、へツへ、ざまあみろ。
 もの凄く乱暴に云ふと、1980年代の中期にユーロ・ビートと呼ばれる音樂が大流行しましてね。バナナラマの[ヴィーナス]や[第一級恋愛罪]、ボーイズ・タウン・ギャングの[君の瞳に恋してる]、リック・アストリーにカイリー・ミノーグ…我ながら記憶に残つてゐるものだ…を思ひ出すひとは丸太と同世代にちがひない。
 この当時はコンパクト・ディスクが普及する前で、近ごろの若エ連中には信じ難いだらうが、日本のアルバムで2,800円。洋樂だと3,200円といふ値段だつた。お小遣ひを捻り出すのがどれだけ大変だつたことか。だからレコードやコンパクト・ディスクのレンタルが商賣として成り立つたのだが、まあその話はいいか。要するにレコードがぎりぎり余命を保つてゐた時代だつたわけだ。

 その"レコード時代"の最末期に花開いたのが12インチ・シングルといふやつ。日本で最初にこの形式を採つたのは、さだまさしの[親父の一番長い日]だが、意図的してではなく樂曲が余りに長いのでやむ事を得ない結果だつたさうで、如何にもさだらしい。
 ユーロ・ビートの12インチ・シングルで記憶する一ばん古いのは[ヴィーナス]か。前段に挙げた歌手は残らずこの形式で、エクステンデッド・ミックスとか何々ミックスと称した7分余りのヴァージョンを出してゐた。前間後奏をたつぷり延ばし、エフェクトを多用しただけの仕上げがほぼすべてで、確か1,200円くらゐ。通常のシングルが700円だつた筈だから、割高だつたのか割安なのか、よく解らないなあ。
 日本の歌手も多少は追随して、佐野元春が数枚リリース(アレンジが中々恰好よかつた)したと思ふ。爆風スランプも出したが、かれらは"一尺シングル"と自称してゐて、佐野のも爆風スランプのも何枚かは買つたね。ひつこく云ふが、乏しいお小遣ひを捻るのはまつたく大変だつたのだよ。

 現代の感覚で云へば、實に莫迦げた値段だらうと思ふ。出費を抑へる為に時にレンタル、或は友人と交換してカセット・テイプ(この話題を取り上げると更に長くなるのでここで省略するが)に録音したのだから。
 懐古趣味といふか下降史観といふか、さういふ立場で云へば音樂の愉しみ方は豊かだつたと結論づけたくもなるだらうが、私は別にそんな風には思はない。鷄と卵のどちらが先かについては曖昧にしておくが、どうやら我われが音樂に親しんだ時期、それらは自分で見つけざるを得ず、見つければ聴き込まざるを得ず、聴き込めば程度はどうあれ、理解もまたせざるを得なかつたのではないか知ら。今の音樂事情にまつたく疎い私ではあるんだが、偶さか耳に入るそれはただ消費されるだけの音に感じられる。
 かう書くと猛反發を喰らふだらうことは容易に想像出來る。幾ら丸太だつてその程度の頭は働き方まさあな。併し確信を持つて、それはちがふと云へますかね。今夢中になつてゐるその曲を30年後に聴いて昂奮する自分を思ひ浮べられるだらうか。もし胸を張つて諾うだと云へるなら、丸太に最近の若エ連中扱ひされてゐる諸君、それは幸せなことなのだ。





 こんな風にえらさうに云へるまで、あと何年必要かは別の問題として。
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by vaxpops | 2016-09-17 07:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)
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Commented by jes22salud2 at 2016-09-17 19:48
嗚呼なんと素敵な昭和のユーロビート達♡

先日みんなで楽しんだイタリアンでも
流れてて…女子には申し訳無いけど
体がウキウキでした。

Commented by vaxpops at 2016-09-18 10:10
乙女酒場さん。

 どうにも沁みこんだユーロ・ビート感覚は不意に顔を出してくるものですね。
 ダブルのソフト・スーツでネクタイを細くしめてゐた時代があつたなあと、遠い目。
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