いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

れんげで調へる

 考へてみると久しく炒飯を食べてゐない。
 半年くらゐは無沙汰なのではないか知ら。

 念の為云ふと炒飯がきらひなのではなく、あれはうまいものだと思ふ。ごく生眞面目な態度を取れば炒飯は調理が簡便な分、上手下手が出やすい食べものだと云へなくもないが、さういふ話は舌のすすどいひとに任せればよい。その辺の中華料理屋で出されるありきたりの炒飯で、私は十分に満足出來る。

 何しろ八釜しいことを云はなければ、素人でも直ぐに作れるのが炒飯の嬉しい点で、溶き卵があれば成り立つ。刻み葱とハムの切れ端でもあれば文句はないし、いやハムの代りに竹輪でもいい。味つけは塩と胡椒。醤油をひと垂らしでも出來れば上等ではあるまいか。何となく私の財布を広げてゐるやうな気分になつてきた。

 勿論上に挙げた材料を炒飯を作る前提で吟味して、注意深く料れば相当にうまい仕上りにならうことはきつと疑へない。これは金華ハムを用意するとか中國の調味料を振り掛けるとか、さういふ判り易いが的は射てゐない發想を指すのでなく、うまい炒飯といふ漠然とした言葉をお皿に盛りつけるのに必要なそれらを撰ぶ意味である。

 どうも肩肘を突つ張らかすやうな書き方になつた。もつと気樂にいきませう。生眞面目な話は生眞面目な料理人に任せれば済む。

 その気樂で思ひ出した。小學生の頃だつたと記憶するが、母親が作つてくれた炒飯を食べる際にはスプンにウスター・ソースを少し注いでから掛け混ぜるのが決り事だつた。あれはどんな理由があつたのだらう。偏食の傾向が強かつた不肖の倅を手懐ける手法だつたか、本人も自認する料理下手を誤魔化す技術だつたか。それは兎も角うまいまづいの前に馴染んだ食べ方はうまいもので、さういふ食べ方は中々体から抜けない。詰りれんげでかけ汁を調へるのが癖なんである。

 ひと匙ふた匙は当然、そのままで喰ふ。そこからが調味の始まりで、酢、醤油、辣油、あればすりおろした大蒜を使ふ。全部一ぺんに混ぜるのでないのは勿論で、諸々の組合せを試す。多くの場合、落ち着くのは酢醤油…酢と醤油の割合ひをどうするかがまた悩ましい…で辣油を使ふことはあまりない。油に油は相性が宜しくないのか、(炒飯に似合ふ)うまい辣油が少ないのか、考へる余地はあるだらうな。

 この癖は外で炒飯を貪る時も同じで、不思議なことにかうすると、かけ汁の調合の具合で適ふ適はないが出てくる。比較的にしても炒飯は味の差異をさう大きく感じさせないのが、かういふ惡趣味(その自覚はあるのですよ)でその差異が浮き上るのは面白い。なので一ぺん、中華料理屋の炒飯で母親直伝のウスター・ソースを試してみたいのだが、流石に失礼と叱られるか知ら。
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by vaxpops | 2016-10-06 07:00 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(4)
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Commented by lagoonchii at 2016-10-07 01:19
あえて何の留保もつけずに書きます。
私は炒飯づくりの達人です。是非私の炒飯を試していただきたい。私が実家を離れるとき母が、何が寂しいってあんたの炒飯が食べられなくなること、と。
ですが、このウスターソースに感動し、それが進化したかけ汁。それにかなうものはなさそうであります。
試す前から、ウスターソースの魅力と、調合かけ汁の段階的に変わりゆく風味に納得してしまいます。
こう書いて思うに、珍しく母つながりの懐かしさで、またのこのこと、連ちゃんでコメント欄を汚し恐縮です。

Commented by vaxpops at 2016-10-07 20:20
lagoonchiiさん。

 以前に確か天麩羅も薬篭に収めてをられるとコメントを頂いた記憶がありますが、炒飯も掌の上とは油断のならない方ですねえ。

 併しウスター・ソースでもかけ汁でも炒飯の立場からすると、いやちよつと待ち玉へと突つ込みを止められないでせう。お試しに鳴られるなら、さういふ(一種の)(惡)洒落が許される食卓で。
Commented by jes22salud2 at 2016-10-16 19:40
我が母親の炒飯、もとい焼き飯はソース味のものが
ありました。なので本格派でもソースはあっても
レンゲにちょこっと乗せて、こっそり楽しむのもありやと。
Commented by vaxpops at 2016-10-17 08:33
乙女酒場さん。

 ああ、さうだ。
 母親が作つてくれたのは焼き飯でした…炒飯ではなくつて。

 れんげの中の小宇宙で、味の変化を愉しむのつて、何やら密やかな雰囲気でいいものです。
 人さまにみせるものではありませんが。
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