いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

うつかり

 うつかりといふのは油断がならないもので、何しろどこでうつかりするか解らない。どんなうつかりを仕出かすかも予測出來るものでなく、そもそもさういふことが事前に明らかならうつかりせずに済むか。

 蕎麦を啜らうとは決めてゐたのである。迷つたのはきつねかたぬきかで、これはいつだつて悩ましい。饂飩だと私が食べるのは基本的に大坂式だから、きつね一本(たぬき饂飩は大坂式にないんである)で問題は起らない。
 さう云へば、東都のきつねうどんで感心した記憶がないのに気がついた。初めて食べた時、油揚げ…大坂風に云へばお揚げサン…が薄つぺらな上にひどく堅いのに一驚を喫し、饂飩とは適はないなあと思つたのは覚えてゐる。但しその薄つぺらで堅い油揚げが、東京風の蕎麦に入るとうまいものに感じられて、かうなるとそれぞれの組合せの相違と考へる他になささうだ。

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 それで思ひ出すのはたぬき蕎麦を初めて啜り込んだのは東都の立ち喰ひ蕎麦だつた。
(なんだ中々、いけるではないか)
と何故だかえらさうに考へたのは、若僧の生意気と笑つてもらひたい。
 我われ大坂人はたぬきの具を"天かす"と呼んで些か下に見る傾向がある…ちよつとした饂飩屋なら無料の天かすがあるのも珍しくない…のだが、實際は"かす"でなく、わざわざ用意した揚げ玉が入つてゐて、口当りといふか舌触りといふかが滑らかな感じに好感を抱いたのだと思ふ。尤も後になつて、本当の天かす(お店で揚げた天麩羅の欠片)を使つたたぬき蕎麦を喰つて、その旨さにびつくりしたのだが。

 詰りきつねにもたぬきにも啜りたくなる動機があつた、あるわけで、その積りだつた筈の私が坐つた途端
「天麩羅蕎麦を、ひとつ」
と口走つたのはどんな事情の顕れか。
 我が親愛なる讀者諸嬢諸氏よ、これがうつかりなのである。ひよつとすると狐と狸の化かしあひ合戰のとばつちりが、かき揚げになつたのだらうか。まつたく、うつかりは油断がならない。
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by vaxpops | 2016-10-17 07:00 | 飲食百景 | Trackback | Comments(2)
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Commented by jes22salud2 at 2016-10-29 19:41
うっかりうっかり化かされて。
真っ黒蕎麦、健在やねぇ。
Commented by vaxpops at 2016-10-30 15:43
乙女酒場さん。

 これだから東都は油断がならんのです。
 それで東都のお蕎麦は矢張り、こんな風でないと、拍子抜けして仕舞ふのです。
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