いんちきで、さらにマクガフィンだつた。

by 丸太花道@乳軟部

隠語

 ニューナンブ(マスケティアズ)には妙な隠語を使ふ癖がある。

 たとへば寫眞を撮りに行つた時、合流の時間と場所を決めて別行動に移るのは"野田方式(またはノダスタイル)"と呼ぶ。千葉は野田で初めて採つたことに因んでだが、今では"イエローキャブ"になつた。或は全員が集まる酒席を称して"クリルタイ"もさうだし、日本を代表する某寫眞機会社をF社N社O社と呼ぶのもさうかも知れない。何故かキヤノンはキヤノンと呼ぶけれども。

 惡癖ですね、これは。
 隠語を嬉しさうに使ふ連中は大体のところ、碌でもないのが通り相場で、いやニューナンブが碌でもないかと云へば、直近のクリルタイで訪れた酒藏直営の某居酒屋で新酒の四合壜を(もしかすると一本半くらゐ)平らげる程度だから、さうでもない筈だが、隠語は本來
『その世界…業界にゐないひとに知られない為の言葉』
であるから、我われが用ゐるのはをかしいとも云へる。大体イエローキャブなんて、聲に出すのが恥づかしいよ。

 尤もさういふ暗号めいた言葉を使ふのは、男子の心をどこかしらくすぐるもので、我が親愛なる讀者諸嬢よ、私は貴女を敬ふ者だが、これ計りは女子の入る余地はないのです。
 それで気がついたのは、我が宿醉ひ仲間であるところの頴娃君で、かれは頑固なお酒至上主義者である。それも生酒原理派といふ過激思想の持ち主で、穏健な私とは相容れない…従つて時に激烈な闘争になることもある…部分があるのだが、併し不思議なことに肴への興味がうすい。

 確かに吉田健一が教へるとほり、お酒は肴がなくても樂しめる飲みものではあるが、肴があればもつと旨くなるのもまた世界の眞實で、私は後者を支持する。かれのやうに酒精もつまみも十分に味はつてゐれば、後は目で愉しむだけになるのかも知れないが、それは味はつてからの態度であらう。今のところ私には無理だな。
 併し頴娃君には肴に限つて、"通人が好むところ"を平然と踏み躙る瞬間がある。こちらは古めかしいから、お酒なら豆腐や厚揚げ、或は畳鰯にお漬け物だと思ふのを、かれは平気で鶏の唐揚げを組み合はす。初めて目にした時はびつくりしたなあ。こちらは脂つ気なら白子や肝と決めつけてゐたのち、当り前の顔で食べるんだもの。適ふのだらうかと思つた。

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 さういふ疑問を感じたのは事實として、何度かその姿を見ると馴れるのもまた事實であつて、慣れは不思議なものだから、一ぺん試してみたくもなつた。それで新幹線のぞみ號の乗客になる機会を得た際に試してみた。
 惡くないね、これは。
 福耳…ぢやあなかつた、[横笛]といふ比較的淡白な銘柄をあはしたのがよかつたのか。唐揚げは衣に(少々あざとい)大蒜の匂ひがあつて、隣の席にゐた妙齢の女性には些か申し訳なかつたが、口の中のそれを洗へる感じは葡萄酒ではちよいと味はへない。常用に足る組合せとは呼びにくいと注意書は必要として、特急列車で二時間の独り酒席でなら、この"アラミス・スタイル"は採用しない理由はないと判つた。大きな収穫であつたが、隠語を作つて仕舞つたのは余分の仕儀だらうなあ。
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by vaxpops | 2017-01-20 07:15 | 徒然諸々 | Trackback | Comments(2)
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Commented by stonefree_01 at 2017-01-21 14:45
肴に興味がないってわけじゃあないのよ。お酒の方へのウエイトが高すぎるだけ。
唐揚げはたぶん、おなか空いてたんだろうね、その時。
いいねェ、アラミス・スタイル!
Commented by vaxpops at 2017-01-21 20:03
"アラミス"頴娃君。

 比重はもちつと、調整しなはれ。
 といふ野暮は兎も角。
 味はひをきちんと撰べば、唐揚げも惡くない組合せになるのが解つたのは収穫でした。

 ええねエ、アラミス・スタイル!
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